ダイキン工業(大阪市)は、このほど2021年度から2025年度までの戦略経営計画「FUSION25」を策定した。カーボンニュートラルの実現を大きく打ち出しているのが特徴だ。
近年では環境・社会貢献の重要性の高まりで、企業は利益追求だけでなくSDGsが掲げる社会課題解決に向けた取り組みが求められるようになった。さらにコロナ禍をきっかけに、空気・換気に対する市場ニーズも広がりを見せている。同経営計画ではこのような大きな変化をチャンスと捉え、長期的な目線で、10年先、20年先の世の中と同社の理想的な姿を考えて、取り組む9個の重点テーマを設定した。
まずは成長戦略として「カーボンニュートラルへの挑戦」を掲げた。「2050年までにカーボンニュートラルを実現する」との目標達成に向けて、未対策の場合の排出量と比べて、温室効果ガス実質排出量を2025年に30%以上、2030年に50%以上の削減を目指すという(基準年は2019年)。
具体的には環境先進技術を確立しカーボンニュートラルに道筋をつけ、社会的責任を果たすとともに、ヒートポンプ暖房・給湯機、インバータ化など省エネ機器の普及拡大による消費電力削減への貢献、冷媒の低GWP化や回収・再生のエコサイクル構築などに取り組む。さらにCO2削減への貢献が期待できるスマートシティプロジェクトへの参画や創エネなど環境新事業にも挑戦していく。
成長戦略は他にも「顧客とつながるソリューション事業の推進」「空気価値の創造」の計3つを発表。空調ソリューションでは、病院や工場など用途、市場別にユーザと直接つながり、機器運転データの活用、エネルギーマネジメントやIAQ技術を組み合わせることによって、個別最適な空間の提供や快適性・安全性の向上など新たな価値提供に取り組む。
低温ソリューションでも、空調や低温機器、店舗設計やメンテナンスも含めた独自の店舗ソリューション事業の確立や、生産地から消費地までコールドチェーン全体をつなぐ事業に挑戦し、食品ロスの削減や食の安心・安全といった社会課題に貢献していく。また、コロナ禍での空気・換気の需要の高まりに対応した新商品やサービスを創出、すなわち「空気価値の創造」をすることにより、グローバルで空気・換気の一大事業化を目指す。
強化地域は1テーマのみで最大市場である「北米空調事業」を挙げた。住宅用、ライトコマーシャル事業での省エネ機器の拡大、大型空調機(アプライド・ソリューション事業)でソリューションを本格展開し、目標は2025年度に北米市場ナンバーワンとしている。
5つある経営基盤強化のテーマはまず、「技術開発力の強化」。成長戦略に関わる技術領域・テーマにリソースを集中し、社外との協創も活用し差別化技術・商品を生み出す。「デジタル化の推進」も掲げ、デジタル投資を大きく拡大。人材育成も力を入れ、ダイキン情報技術大学を中心に2023年までに1500人のデジタル人材を育成するという。
さらに「市場価値形成・アドボカシー活動の強化」で企業イメージの向上も図る。カーボンニュートラルの実現や空気質への貢献など、社会課題解決につながる同社の技術や商品に対して幅広いステークホルダーの共感を獲得し、持続的に市場価値を高めるのが狙い。R32やインバータ機の普及率が低い地域での普及拡大の推進や、地球温暖化抑制に向けたヒートポンプ化の加速、冷媒回収・再生の推進などに取り組んでいく。
そのほかにもリスクに備えた生産のバックアップ体制、デジタル活用による「強靭なサプライチェーンの構築」や〝人を基軸に置く経営〟をベースとする企業文化、組織のDNAを時代の変化に合わせさらに磨きをかける「ダイバーシティマネジメントの深化による人材力強化」もテーマに挙げ、ニューノーマル時代を勝ち抜いていく。
定量目標は、2023年度の中期実行計画として、売上高3兆1000億円、営業利益率10.5%と設定し、さらなる事業拡大に向け、8000億円を超える投資を実行することを明かした。2025年度には、売上高3兆6000億円、営業利益4300億円(営業利益率約12%)を目指す。
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