異分野からも知恵を借りよう
前:私が伝え聞いたところによると、家を1週間で買う人たちがいるそうです。知り合いが家を買ったと聞いて「あの人が買えるんだったら」と、近くで建売を探してみると、今の家賃と同じくらいでローンが組めるとわかる。「じゃあ買った」となる人がたくさんいるんですね。
でも、彼らが後々、暖房費で困るっていうのではダメなわけです。だからトータルでのコストを考えるべき。その家を買ったら、住宅ローンにプラス、いくら光熱費がかかるのかを考えれば、正直なところ、ギリギリなわけですよね。
彼らにとっては、住宅ローンが、家賃と同じぐらいの返済額で組めることがかなり重要らしいです。分譲事業者の最大の売りは、近隣の家賃相場と同じぐらいの返済額でマイホームが手に入ること。これは絶対に外せない。家賃相場内に収まるように、家のコストを決める。ということは、断熱や太陽光の追加コストを、月々の返済額は変えずに負担できるような住宅ローンの仕組みを作れば、購入者にとってはそれで済むのではないでしょうか。
これは、今泉(太爾・日本エネルギーパス協会代表理事)さんからの受け売りですが、分譲系の事業者は、規制をぎりぎりでクリアすることに慣れているから、義務化すれば、初めは文句を言ってもちゃんと基準をクリアした建物をつくる。窓や太陽光パネルを、大量に発注、購入すればスケールメリットもあるでしょう。分譲こそ義務化が効く。
だから、住宅ローンの返済額を増やさずに断熱したり、太陽光を載せられる、ファイナンス上の制度設計を決めてしまえばいい。金融系の人なら何かいいお知恵をお持ちでしょう。ある部分だけ見て「できない」と言うんじゃなくて、ボトルネックを詳しい人の、いい知恵で解決していく。
三浦:光熱費を表示しようという流れの中で、前先生がおっしゃったように、月々のローン返済額と光熱費をセットで表示することを義務化するだけでも、ずいぶん状況は変わるかもしれないですよね。
前:省エネで太陽光が載っていても、返済額が同じだとなればね。住宅ローンで評価をされていればいいわけですよね。この人は与信が増えていると考えたりすればいい話だと思う。金融系の人なら、ちょっと考えればいい知恵が出せるのではないでしょうか。
三浦:再販価値なども影響しますよね。
竹内:ちょっと前まで、断熱をすると壁が厚くなって部屋が狭くなるからだめ、という、えっと思うような論理がまかり通っていた。だけど、壁が厚くなった分狭くはなるけど、寒くて使えない部屋がなくなったら、トータルで広くなるとも考えられる。そういう価値と近いものがあると思うんですよね。
変な言い方ですけれど、断熱性の低い、ペラペラな家に住んだって、電気代は払うわけですよね。不快な思いをしてもペラペラな家が好きっていう人は、やっぱりいないと思うので。情報をどうやって取るか、どうやって出していくかでしょう。
前:とにかく金融だと思いますよ。
住生活基本計画にZEHが盛り込まれたからには、国交省は動かないといけない。経産省は、補助金しかインセンティブになる施策がありませんが、国交省は税制優遇やフラット35など、補助金以外の誘導施策をいっぱい持っている。それを利用すれば、ZEHの補助金よりも強力な誘導策になる。断熱と太陽光のイニシャルコストは必ず償却できるから、国交省ならではの力で支援すればいいんです。
お金の問題は絶対に外せません。ちゃんと解決してあげないと、家を買えない人が出てしまう問題は非常に深刻です。でも、それはほんのわずかな知恵で解決できる問題―不動産業界や金融系には簡単すぎるテーマ―だと思いますけどね。
ところで、次回の検討会では、国交省がまとめか何かを出してくれるんでしょうか。
三浦:竹内先生は何か聞いていますか。
竹内:私はまだ、何も聞いていないですね。2030年の削減率目標が変わったことに対する、各省庁の考えも全く聞いていないですし。
この会議は経産省と環境省も一緒ですが、そちらの人たちが何か言っているわけでもない。でも合同会議ですから、国交省とは全く異なるやり方をしているわけですよね。規制緩和に関しては総務大臣もいらっしゃるし、どうなるのでしょうか。
もうシナリオはあるのかもしれないですが、私は少なくとも今後どう進んでいくか、わからない。だからこそみんなの応援が欲しいのですが。
竹内・前:ありがとうございました。
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