補助金・普及策はどうあるべきか
三浦:この流れで、僕からお聞きしたいことがあります。先端的な工務店さんにとっては「太陽」的な優しい、もっともっと、という促進政策で、なかなかそこまで追いつかない人、もしくは断熱の意欲が低い人とっては「北風」的な政策かな、と思っています。一律で太陽、一律で北風ではなくて、その人に応じた補助的なものだったり、逆に補助が受けられなかったり、金利が高くなったりと、そこも柔軟性かなと思っています。
小山社長、今すぐできそうな補助政策とか、こんな政策があったら工務店さんでも使いやすいのに、とか、思われる点ありますか?
小山:補助施策に関してはかなり手厚くされていますが、手続きが煩雑で躊躇される方が多いので、簡便化されるのが望ましいと思います。あとは税制。国交省に頑張っていただきたいんですけど、省エネを頑張った方への優遇を、仕組み化して導いていただきたいと思いますね。
三浦:全くそうで、どこで聞いても手続きの煩雑さと、期末までにやらなければいけない期限が、補助政策のネックになっている。きょうの委員会もやっぱり、お役所仕事が残っているので、お役所仕事をやめてみると一気に動き出すものがあると思いました。
竹内先生はどうですか?ほかにこんな政策があったら、とか。
竹内:太陽光発電を義務化したら、電気代を払わなくて良くなるわけですよね?それこそ、太陽光載せたらその分ローンの枠を増やすだけでも、(住宅は)所有者のものだけど、社会的な資産として広めていく強力なインセンティブになると思います。
それから、サードパーティー(第三者)でやっていくやり方で、新しいビジネスがそこらへんに広がっている気がします。だから「2030年に(ZEHの義務化を)やるよ!」といったら、そこを目掛けていろんなビジネスを作る人が出てくると思う。そういうもののために、引っ張るための基準は大事で、2030年にみんなZEHになるって話をもっとちゃんとやらなきゃいけないようになっていけばいい、と思います。
三浦:規制とかはネガティブにとらえられがちだけど、これによってイノベーションだったり、技術レベルが上がったりするので、一概に悪いことだと思っていなくて、むしろこれによっていろんなことが進んでいくのかなと思っています。
あと、さっきの計算プログラムもお役所仕事としてしか使えないということから抜け出すことができたらもっと計算が楽で面白くなりそう。前先生はこの辺、政策的な策はありそうですか?
前:国交省も、限られたマンパワーでやっていると思うけど、正直限界が来ていると思うので、もうちょっとみんなと協力して知恵を出し合うことだと思うんですよね。
本来は、規制はなしでうまくルールを作って、自由競争でいいものが選ばれていくようにすればいい話で。家の価値も、利便性だけで評価されるのではなく、建物性能まで評価されればいい。ただ、不動産業界には「自分たちがわからないものに価値を付けたくない」というか、自分の知っていることだけで話が終わってほしい、という感覚がね……。
やはり、みんなが領域を重ね合って、勉強し合わないと。断熱とか太陽光と断片的に議論していても限界が来る。でも、そういう話に落とし込まないと進まない面もあって、悩ましいですよね。
今回の検討会も、半年で方向性を出すというけど、何が出てくるのか。最悪のアウトプットは「2025年に、省エネ基準への適合を義務化します。適合義務化に対応できない業者には補助金をいっぱい出します」だと考えています。
補助金に関して私はネガティブなところがあって。基本的には、住宅はお施主さんが自分のお金で建てるべきだと思うんですよ。それを合理的に応援してあげる、というのが正しいと思う。
竹内:私は、ストックに対する補助は設けるべきだと思っていて。それがないと、必ず「新築はいいけど、私たちは?」ってことになるから、制度的に必要だと思う。ただ、新築に対する補助は、あまりいらないと思いますね。(補助金がなくても)どんどん(標準的な性能が)上がっていってしまう気がします。
前:補助するんだったら、今のコスト計算ではできないことをできるようにする、新しい技術に先行投資されるべきだと思うんですよね。
例えば、ZEHには補助金が出ていますが、以前、経産省の人に「なんで普通にできることに補助金は出すのに、技術革新にお金は出さないんですか?」って聞いたら「ZEHは普及のためで技術開発のためじゃないですから」とあっさり言われた(笑)。
私は、補助金は「種もみ」だと思うんですよ。これによって芽、新たな技術が育つものでなければいけない。日本には、種もみをごはん代わりにボリボリ食べてしまう人がたくさんいて、それはおかしいと思う。
――コメントがたくさん来ているので、見ていきたいと思います。
竹内:今、何人の人が見ているの?
――184人です。先ほどのファイナンスの話に関して「太陽光の自家消費と売電収入を返済の原資とすれば、イニシャルコストくらいは十分賄えるんじゃないか」。もちろん「それは難しくない?」というご意見もあります。「ZEH義務化の現実論としては補助金よりも、既存のローン減税をZEH限定にするみたいなやり方がいい」というコメントもいただいております。
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