大分市を拠点にする木楽舎(きらくしゃ)は、いわゆる差別化とは対極の家づくりを実践する中で、顧客と時間をかけて丁寧に関係性を醸成することを、自社のブランディングで最も重視している。その上で過大なコストをかけずにSNS広告を上手に活用しながら、完成見学会から着実に受注を生み出している。古民家を拠点とするコミュニティー活動などにも取り組んでおり、今後は、まちづくりを意識した事業なども展開しながら、自社が理想とする住まいや暮らしぶりを発信していく考えだ。
「自己主張しない家づくり」
木楽舎は、社長の安東洋輔さんの父で前社長の俊輔さんが、東京の住宅会社、地元大分の工務店で設計社員として携わった後、1994年に独立して立ち上げた設計事務所。2011年に工事部門を持つことで工務店に業態を転換した。
同社がポリシーとして掲げるのは「主張しない住まいづくり」。「奇抜なことをせず、できるだけ目立たず、それでいて『わが家だ』とうれしくなれる住まいこそが、住まい手にとっても、職人さんにとっても健やかな暮らしの器になる」と安東さんは話す。性能値やデザインで差別化する同業他社と一線を画し、特殊な素材や工法を使うこともない。地域の風景になじむ意匠と、敷地にあわせたパッシブデザイン、自然素材を使い、コンパクトでも広がりを感じる空間づくりを目指す。
契約や工期を急がずに「住まい手とつくり手が心置きなく言いあえる関係」を重視し、初回接客から契約まで平均4~6カ月、プラン開始から引渡しまで8カ月~1年間をかける。契約・着工を急ぐ顧客は「当社とはご縁が無かった」と潔く手を引く。
安東さんは、大学を卒業後6年間、高校教師を務めたあと、2013年に入社。企画広報・営業・設計まで7年間の修業を経て、今年1月に社長に就いた。現在は、代表を退いた俊輔さんを含む設計チーム4人と、現場監督2人、経理1人の計7人体制で、年間13~14棟を手掛ける。
完成見学会を起点に受注
受注の起点になるのは完成見学会。「ほぼ100%承諾してもらえる」という施主の協力体制のもと、約1カ月半に1回のペースで年間7~8棟、週末2日間開催している。
当初は予約不要で自由見学できるオープン制をとっていたが、「入れ代わり立ち代わりで顔も覚えられず、落ち着いて話ができない」と、3~4年前から事前予約制に切り替えた。「1時間あたり最大2組」と枠を設け、2日間で24組分を用意する。
見学会の告知は、ホームページ・ブログ・SNSを並行して利用する。当初、使っていた広告チラシは2年前にやめ、FacebookとInstagramに毎回5~6万円程度の広告費を投資する。最近では、広告をInstagram1本に絞り込んでいるが、反響はほぼ変わらず、毎回、見学希望枠がほぼ埋まるという。
⇒ 続きは、『新建ハウジング別冊・ワンテーママガジン5月号(5月10日発行) 工務店ならではの広報&ブランディング』に掲載しています。
※下記オレンジ色の試読バナーよりお申し込みいただくと、すぐに電子媒体で続きをお読みいただけます。
新建ハウジングとは
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。