国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)と気象庁気象研究所は7日、「コロナ禍によるCO2等排出量の減少が地球温暖化に与える影響は限定的」との見解を文章で発表した。
昨年来、新型コロナウイルスにより、各国がロックダウンなど、国民の行動制限をする施策が講じられており、2020年の二酸化炭素(CO2)の温室効果ガスや人為起源エアロゾル(大気中に浮遊する微粒子)の排出量は、産業革命以降前年比で大きく減少している。その上で、世界16カ国の気候モデル研究者らで構成された国際研究チームによるモデル相互比較計画が立ち上がり、日本からは海洋研究開発機構と気象庁気象研究所が参加。新型コロナウイルスの流行による温室効果ガスや人為起源エアロゾルなどの排出量減少が地球温暖化の進行に与える影響を研究した。
シミュレーションでは2020、2021年の2年間のみ、温室効果ガスや人為起源エアロゾル等の排出量が減少し、その後、元に戻ると仮定すると、2020年からの2年間は、特に南アジア、東アジアでの大気中エアロゾルの減少により、エアロゾルなどで遮られずに地表に到達する日射量が増大した。しかし、地上気温や降水量にはほとんど、影響が認められず、世界平均を見ても同様の結果だったため、これらの結果から、「一時的な排出量減少が地球温暖化に与える影響は限定的」と結論付けた。
今後は、「地域的、月単位など短期的な影響や極端現象、地球の炭素循環、大気循環等への影響の評価には、詳細な解析が必要」とし、新型コロナウイルス感染症終息後、社会の取る経済シナリオを様々に想定したシミュレーションも行っているという。また、「多大な労力を要する気候モデルによる計算結果を比較的短期間に世界各国から持ち寄り解析できたこと自体も大きな成果と言える」と成果を強調した。
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