新建ハウジングが運営する工務店向けオンラインスクールサイト「チカラボ」から、工務店の経営者や実務者に役立つ記事をお届けします。
今回は、半澤伸夫さんの「住宅営業の成功事例共有室」ルームからの記事です。
半澤 伸夫
金融機関を経て、住宅業界に転職。大手住宅FC企業にて年間42棟の受注実績で、住宅営業実績第1位を獲得。その後長く営業マネージャーとして活躍し、工務店経営者を経て、中小の工務店の営業支援を事業とした、株式会社いい家創り応援ネットを設立。今も現場にこだわり続けている。
いい家づくり応援ネットの半澤です。
私たちはよく「営業力が高い/低い」と表現しています。この時の基準(ものさし)はなんでしょうか?契約数でしょうか?契約率でしょうか?私が考える営業力の基準の一つが「リードタイムの長さ」です。リードタイムとは初回面談から契約までの日数のことです。
つまり「営業力が高い=契約までの時間が短い」「営業力が低い=契約までの時間が長い」ということになります(売れる営業パーソンのリードタイムは短くなる)。この理由としては、営業力が高いと短期間に信頼関係を構築できる、お客様の不安を解消しつつ前向きな気持ちにさせる、家づくりを延期したり中止させることがない、などが挙げられます。
一方でリードタイムが長くなる(営業力が低い)営業パーソンがつまづきやすい話題があります。それが「時期(今がお買い時)」「土地」「建物(商品)」「資金」の4つになります。つまりこれらの話題に的確に対処することができればリードタイムは短く(=営業力が高く)なります。
そこで今回は営業力を高めるために、リードタイムが長期化する4つの原因とその解決法をお伝えします。
時期(今がお買い時)
見学会やモデルルームに来場するということは、少なくとも住宅購入に興味があるはずです。しかし具体的な入居希望日を聞いても、「まだ先です」「決まっていません」「良い土地が見つかれば……」など漠然とした回答をするお客様は少なくありません。その背景には何があるのでしょうか?
パッと思いつくものだけでも、
・売り込まれると思って警戒している
・本音を明かしたくない
・家づくりへの不安が解消されていない
・住宅ローンを組む自信や確信が持てていない
・自己資金がない
・年収が少ない
・まだ若いと思っている
・転勤があるかもしれない などなど
たくさん出てきます。これらは信頼関係を構築して本音を聞き出していくしかありません。
一方で「2~3年後くらい」とか「子どもが小学校に入学するまでに」といったように、数年先を希望している場合はどうでしょうか?このお客様の言葉をそのまま受け入れて長期管理で商談するつもりが、後日お電話をしたら既に他社と契約していた……なんて経験をあなたもしたことがあるかもしれません。この悲劇を防ぐには「お客様の理想を実現するためにもっとふさわしい時期や提案があるのではないか?」という観点で考え、提案するしかありません。
お客様も質問や提案されて初めて自分の真の要望や優先順位に気づくことがあります。その結果すぐに行動しはじめるようになることも日常茶飯事です。やはり「時期」の壁を超えるには初回面談や2回目の商談でお客様が本音を営業パーソンに話すだけの人間関係づくりが何よりも大切なことはいうまでもありません。
土地
土地無しのお客様の決まり文句である「良い土地があれば……」まさかこの言葉を聞いて「土地を決めれば契約が取れるぞ!」と考えて、未公開物件探しのために不動産業者周りはしてないですよね?売れている営業パーソンはレインズに掲載されている物件で決めています。ではどうやって表に出ている物件で決めることができるのでしょうか?
まずは「どこで探しているか?」の前に「なぜそこで探しているのか?」その理由を確認しましょう。次に「なぜその希望条件なのか?」の理由を確認していきましょう。そこまでお聞きしてから私たち営業側で土地の要望(スペック)を拡げながら「希望の優先順位」をつけるのです。そのためには事前接客でどれだけお客様の要望を、私たち営業スタッフが案内したい物件に寄せた提案へ落とし込むことが大事になってきます。
なぜならお客様は予算内で本当に自分たちが考える理想の住環境を実現するための優先順位は分かりません。しっかりとヒアリングをして私たちが根拠を示しながら優先順位を決めていきます。その際は購入希望予算ではなく、購入可能予算から自社の建物を建てる場合を考えた、現実的な相場観をしっかり理解してもらいましょう。
これは商談や書面上だけで行うわけではありません。もっとも効果的な方法は、希望条件を明確にするための土地案内です。実際に土地を見て、説明をして、そのうえで気に入った点と気に入らなかった点を聞き出していくのです。
たとえば「値段や広さは良いのだけれど、ちょっと小学校から遠い」と言われたら、「値段や広さが同じくらいで、小学校からの距離が〇分以内であれば買いますか?」と確認します。もし回答が「はい」であれば希望条件が明確になったと判断します。逆に「どうなんしょう?」という答えであれば、そもそもの土地の見方や選び方や相場観を理解できていない可能性があります。この場合には改めて土地を決めるセールスステップをきちんと作成し直して、希望条件を明確にしていく必要があるわけです。
そうすることでレインズに出ている物件で合意を獲得することが可能になります。もし案内をして大きく条件が変わるようであれば、日を改めて次の案内で新しい条件に合致する土地案内をおこなうことになります。
建物(商品)
特に土地持ちのお客様で起こることですが、建物(プラン)が決まらないという問題があります。しかし本当の問題がプラン自体よりも、営業パーソンの提案方法(プレゼンテーション)の場合があります。まさか図面を見せて終わる人はいないでしょう。少なくとも「なぜこのようなプランになったのかの根拠」は説明していると思います。しかしそれだけでは不十分なのです。
マーケティングで有名な格言に「人は感情で物を買い、理屈で納得する」という言葉があります。上記のプランの根拠説明は理屈の部分にあたります。つまり説明する前にお客様の感情を揺さぶるプレゼンテーションが必要になります。たとえば建築理由にまでさかのぼってプランの魅力を伝える、図面を着色したり思いを書き込んだりすることも有効です。
さらに「お子様が楽しそうに遊んでいる姿を、キッチンからも見守れる~~」「笑顔のコミュニケーションが生まれる~~」「収納しやすくスッキリきれい!しかも家事もしやすく便利で~~」などのように具体的な理想の場面(シーン)をイメージさせて、その時に感じる感覚を想像してもらいます。
もし新たな要望が出てきた場合でも「わかりました!来週までに修正してきます!」と返答しないでください。正しくは「○○を直したら希望通りのイメージになりますか?」と確認をして、合意を得てから「来週までに直してきます」とアポイントを取るようにしてください。さらに可能ならアポイントの前に一回お客様とコンタクトを取り、先日のご要望から変化がないことを確認してください。そうしないと更なる要望が出ていたり「前の方が良かった」とプラン提案をした瞬間に言われてしまうことにもなります。
もう一つ大切なことが「見積りを同時に提出する」ことです。気に入れば気に入るほどお客様は金額が気になります。希望のプランが予算内に収まっていれば、一気に契約になることも普通です。場合によっては予算アップの検討をし始める場合もあります。もしプランと同時に見積もりを出さないと、見積り提出までお客様は不安な日々を過ごすことになったり、あとで予算オーバーが分かったときにショックを受けて建築意欲がなくなってしまうことにもなりかねません。
資金
資金計画が明確にならないと家づくりは進みません。しかしお客様に予算を決めてもらうことは止めてください。なぜならお客様は正確な知識があって予算を決めているわけではないからです。多くの場合は今の給料と家賃の関係や何となくの金額を言っている場合がほとんどです。
お客様の意見そのままで資金計画をおこなうとローコスト住宅しか成り立たず、自社の家づくりだと無理のある資金計画になりがちです。いくらの予算で家を建てるつもりなのかを聞くのではなく、お客様の生活や人生設計からベストな資金計画を提案するべきなのです。
また最近ライフプランを保険業者や〇〇学校のような第3者に依頼する工務店が増えていますが、おすすめはしていません。お客様は自社の家と保険を売るために住宅会社が用意した保険業者に対して疑念を持っています。医療の世界でもセカンドオピニオンの時代ですから当然といえます。
そしてベストな資金計画をおこなうために必要なことは「自己資金」の把握と「返済可能額」の提案です。自己資金については金額だけではなく出所の確認までしっかり行ってください。もし資金援助を受けている場合は、キーマンとしてマークしておく必要が出てきます。
そして返済可能額は予算決定の最重要項目です。だから最後にお客様に月々の返済希望額を聞くのではなく、年収や属性や将来の人生設計からお客様の借入可能額や返済可能額を提案してください。プロとしての資金計画を提案を行うことで信頼を得ることが、契約の第一歩でありその後の土地探しや家づくりをスムーズにおこなうためには欠かせません。
最後に
この数年、お客様に嫌われないこと、そして提案型セールスをすることが推奨されています。もちろん正解ではあるのですが、その弊害も出てきています。たとえばそのうちの一つが「お客様の言葉に共感を示して受け入れすぎる」ということです。
ここまで見てきたようにお客様の言葉を真に受けて、そのまま計画や提案をしても理想の住環境は手に入りません。そして契約にもなりません。忘れてはいけないことは、お客様は素人で住宅購入経験がない、そして自分たちの本当の欲求や問題を正しく認識できている人もほとんどいないという事実です。
一方で私たちは家づくりのプロフェッショナルです。ヒアリングした内容を鵜呑みにするのではなく、プロとして最適な提案を考え、お客様が迷わず安心して家づくりを進められるようにサポートしつつ、時には夢が見られるプレゼンテーションをする。
このようにして住宅営業パーソンとしてのレベルを上げることが、契約までのリードタイムを短縮しより確実な契約に直結します。ぜひ今の営業レベルに満足することなく、お客様に向き合い、より良い住宅営業パーソンとなれるように学び、実践し続けてください。
追伸
他社の営業よりもより確実により強固な信頼を構築して契約率をアップさせ、リードタイムも短縮するために欠かせない営業テクニックが「フレーミング」です。
「フレーミングって何?」「最近失注が増えている」「成約率が上がらない」「契約できても値引きされてしまう」「紹介が発生しない」などを感じている人は、ぜひコチラをご確認ください。
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