サトウ工務店(新潟県三条市)は、小さな工務店の強みを生かし、家具・建具の造作でもさまざまな挑戦を行っている。恣意的なデザインを排除する“ノイズレスデザイン”の実践を家づくりのコンセプトとして掲げ、その一環として、大工・職人と一緒に次々と新しい仕様・納まりに挑む。その積み重ねが、量産タイプの住宅では到底まねできないクリエイティブで付加価値の高い空間づくりへとつながっている。
室内空間に家具・建具を埋没させる
同社社長の佐藤高志さんの造作家具・建具に対するこだわりは、「室内空間に家具や建具を埋没させ、できるだけ目立たせないようにする」こと。建築(住宅)の設計・デザインにおいてコンセプトとしている「恣意的なデザインではなく、ノイズだと感じるものを1つずつ丁寧に消していくデザイン」を家具・建具でも貫く。「正直言って一般の施主は気づかないレベル」と佐藤さんは笑うが、そのこだわりを積み重ねることで、確実に空間が整理され、洗練されていくという。
同社では、家具・建具の設計で、無駄な「遊び」やすき間をつくらないようにしているため、厳密な寸法精度と、現場においては高い施工精度が求められる。現場では、「2~3mmの誤差でも建具が戸袋に入らない」というレベルの設計に対する正確な施工力が要求される。
そのため同社では、家具や建具の製作を、建具屋ではなく家具屋に一括して依頼している。佐藤さんは「コストアップにはなるかもしれないが、高い寸法精度を再現できる施工力は、他社より高度な納まりに安心して挑戦していくための重要なベースになる」と説明。「新しいことにチャレンジした結果のコストアップは、付加価値が高まっている証拠。この価値を施主が認めてくれれば、それだけ高く売ることができる」と佐藤さんは考える。さらにはコスト以上に、現場が常に新しいことにチャレンジする気概に満ちているという環境は、工務店にとって計り知れない価値がある。
職人との協働により設計をブラッシュアップ
「ノイズを消す」という明確なデザイン方針のもと、設計は職人との協働による作業として進める。佐藤さんの頭にアイデアが浮かべば、まずは施工する大工や職人に伝え、実際に再現できるか、ほかに良い方法はないかといったことを相談する。
職人とのコミュニケーションのツールとして頻繁に活用するのが、無料の3次元モデリングソフト「Googleスケッチアップ」だ。
⇒ 続きは、『新建ハウジング別冊・ワンテーママガジン1・2月合併号 空間の質を高める造作家具・建具』に掲載しています。
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