「過去に例を見ない程の世界的な木材価格の上昇です。原油価格の上昇やコンテナ不足の影響による輸送コストの増大もあり価格維持が極めて困難な状況」「梁桁・柱とも120(巾・角)材が枯渇しており、120仕様は受注できません」-。
欧米や中国での木材需要の拡大や、コロナ禍の混乱による海上輸送用のコンテナ不足・運賃高騰などが相まって、国内市場で米松や欧州材の供給不足、価格急騰といった、いわゆる「ウッドショック」とも言える状況が深刻化しつつあります。
全国各地の木材卸や製材加工会社は、3月上旬から4月にかけて、取引き先である地域工務店に対して、こういった納品遅延のお詫びや今後の見通し、価格改定などに関する通知書を相次いで出しています。
新建ハウジングが4月16日~28日に、全国の工務店や住宅関係事業者を対象に実施した、ウッドショックの影響について聞く独自アンケート調査では73%が家づくりに「影響を受けている」と回答しました。
こういった状況を、工務店経営者らは、どう受け止めているのか。本紙の取材に滋賀県の工務店(年間新築30~40棟)の経営者は「6月までは目途が立っているが、7月以降の上棟分は契約ができない状況。先行きが不透明で不安だ」、長崎県の工務店(同30棟)の幹部は「夏以降に大型を取る計画は取りやめた」と話します。
先月、林野庁と業界団体の関係者らを集めて対応協議した会合では、出席したJBN担当者が「活路が見えない。消費者に価格転嫁への協議が難しいといった状況が目の前に迫っている。材も値上がりしており、危機的な状況は間近、あるいは一歩踏み込んだ状況」と危機感を露にしました。全国木造住宅機械プレカット協会担当者は「ある会社は4月~6月まで、昨年から3割減産し、顧客には、前年実績の7割という供給制限を伝えている。5月~6月にかけて状況は悪化する見込みで、プレカット工場が窮地になる」と危機感を訴えました。
このほか1~2面では、米国や欧州、東南アジア、ニュージーランド、中国の動向を詳報しているほか、3面では、林材ジャーナリスト赤堀さんが、ウッドショックが住宅業界に与える影響や今後の見通しについて寄稿しました。今月20日、30日号の3回にわたる短期連載でレポートしていきます。
7面では、毎月10日号の人気連載「松尾和也のエコハウス設計メソッド」で、太陽光発電の買取単価と設置費用の関係性を解説してもらったほか、16面では、先月19日に初会合が開かれた「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省 エネ対策等のあり方検討会」終了後に、委員として会合に参加した竹内昌義・東北芸術工科大学教授のほか、前真之・東京大学大学院准教授、小山貴史・エコワークス社長の3人のキーマンに対し、オンラインで公開取材した模様を伝えています。【栁原潤】
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