新建ハウジングが運営する工務店向けオンライスクールサイト「チカラボ」から、工務店の経営者や実務者に役立つ記事をお届けします。
今回は、佐野郁夫さんの「現場監督論 -現場監督以外も知っておくべき、現場監督の仕事-」ルームからの記事です。
佐野 郁夫
木質パネル工法の住宅メーカーに入社後、研究所、開発部門にて住宅の性能、構造や大臣認定取得に関わる業務に従事。その後、日菱企画株式会社/住宅産業塾にて事務局長として住宅産業塾を運営。その他、魅せる現場づくり基礎講座、魅せる現場コンテスト、現場診断・指導、業務改善指導のほか、日菱企画グループのコンサルティング全般をまとめている。
今回は9大管理の残り3つである、廃棄物管理、手続き管理、顧客管理について説明いたします。
7.廃棄物管理
最近は「環境を重視して社会に貢献する企業」が当たり前の時代になりました。
住宅工事の廃棄物管理は、端材や残材など廃棄物を多く排出する工事現場においてゴミの減量、環境汚染を防ぐことと資源をリサイクルする2つの目的から法律で管理が義務づけられていますが、そうした社会的責任を果たすために行う取組みです。現場監督はこの廃棄物管理を「法律の遵守」と「コスト削減」という二つの視点から取組む必要があります。
現場での端材や廃材処理は“出さないこと”を基本にします。プレカットをうまく使うことも大切です。構造材だけでなく下地材や羽柄材など使用する木材の多くをプレカット加工することで端材の発生を減らせます。それを行うには資材・仕様の標準化が欠かせません。
建築現場での廃棄物処理については、
①野焼きの禁止
②産業廃棄物管理票(マニフェスト)制度
③不法投棄の罰則
をよく理解しておいてください。
また、現場から排出される廃棄物が最終処分まで適正に行われたことをマニフェスト伝票で確認することが義務づけられており、自社は知らなくても頼んだ業者が不法投棄をすると連帯責任を課せられ、最悪の場合、多額な費用を要する原状回復処分を科せられます。知らなかったでは済まされないことを肝に銘じておく必要があります。
よって、廃棄物処理とその管理に関しては、工務店(現場監督)が最終処分状況まで確実に把握し、管理することが求められます。従って廃棄物依頼業者のみでなく解体工事業者、収集運搬業者、中間処理業者、最終処分業者のすべてを管理し、とくに最終処分業者の特定をすることが肝心です。再度チェックしてみましょう。
8.手続き管理
現場監督の手続き管理とは、着工前業務を含め、9大管理すべてについて実際の現場管理システム・体制のなかで行う各々の書類作成、打合せや確認の事前準備、依頼や申請、保管など手続き作業の管理を指します。
業務の流れに沿って、その都度手続きが必要なものが出てきます。着工前については、営業、設計からの書類受け取りや引継ぎに始まり、施工計画書、工事工程表、実行予算書などの書類作成、発注書作成と承認、発注、「お客様最終打合せ」開催や工程会議開催のご案内、確認書類の保管、など数多くあります。また、社外に対しては地方自治体、管理監督機関、警察署、法務局など監督官庁に対する各種申請手続きとその管理です。
着工後における手続き管理では、現場管理・運営を行ううえで必要とされる手配、依頼、検査補正、追加変更契約、検収などの手続き管理です。現場監督は、多忙な現場管理業務を進行させながら、こうしたさまざまな手続きを遅滞なく処理していかなくてはいけません。このような手続き業務は、作業を標準化・システム化させて先行管理していかないと、手続きのし忘れなど必ずミスを犯します。この手続き管理も総合手配・指示管理表を活用し、先行管理する必要があるのです。
9.顧客管理
「お客様対応」は現場監督が行う「現場管理」と同じ重みを持つ重要な仕事です。うまく現場運営を進めたければ、どんなに忙しくとも「お客様対応」に手を抜かないことです。お客様は工務店に家づくりを依頼するなかで、期待がいちばん高まるのが「請負契約」後です。とくに着工後の工事中は“どんな家が建つか”“注文どおり建ててくれるか”“手抜きをしないか”“間違いを起こさないか”“現場監督はしっかり管理してくれているか”不安がどんどんつのっていくものです。
このようなとき現場監督がお客様への連絡、意思疎通を怠ったらどうでしょう。現場監督への不信、不満は一気に高まります。一度失った信頼を回復するのはとても難しいものです。一度信頼を失うとそのお客様の信頼回復はほとんど不可能といっても過言ではありません。その結果、起こるのはクレームの山です。何でもないことが不満になり苦情に結びついてしまうのです。「お客様のためにどのようなことをしても理解してもらえない」このような経験を持つ現場監督も少なくないはずです。
現場監督が心得ておかなければならないお客様対応は「現場の進捗報告・連絡」と「現場での立会い説明・確認」の2つです。「現場の進捗報告・連絡」は最低でも1週間に2回、できれば1回目は訪問してここ1週間の現場の施工状況と来週の工事予定を報告します。近々に立会い確認が予定されていればその日程確認もします。
「現場での立会い確認」は着工から完成まで9回行ってください。立会い説明・確認は、ただ単にお客様にご確認いただくだけではなく、お客様にご注文いただいた工事内容に沿って、現場が進んでいることを説明することが大切な目的です。
お客様の大切な現場をお預かりしていることを忘れずに、絶えずお客様の不安が起きないよう「お客様の納得がいく」現場運営を心がける必要があります。そのための絶対条件がお客様への現場状況の「報告・確認」です。
いつでもお客様が現場の進捗状況がわかり納得していれば不安は起きません。
“一生懸命やっているのだから専門家の我々に任せておけばいい”といった態度は絶対に慎まなければいけません。お客様の信頼を得るには専門的なことであってもお客様にわかりやすく説明し確認することをいつも心がけることです。
このようにお客様と一緒になって家づくりを進める心を持つとお客様が信頼し納得する顧客満足度の高い現場運営を実現することができるのです。
ここまで3回にわたり、現場監督による「9大管理」について説明いたしました。ここに書いた内容は、あくまでも基本的な考え方です。具体的帳票や流れといったことについては、住宅産業塾にて学ぶ機会がありますので、興味にある方は事務局までお問い合わせください。
次回は、これらをスムーズに確実におこなうために必要な、“業務フローで標準化と仕事内容の明確化”について説明いたします。
▼佐野郁夫さんの他の記事はこちらのルームから▼
「現場監督論 -現場監督以外も知っておくべき、現場監督の仕事-」
▽「チカラボ」とは?▽
https://chikalab.net/about
▽チカラボ公式サイトはこちらから▽
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。