ライフサイクルコストで考えよう
これまで家の常識と言われていた、「築30年で使えなくなる」あるいは「地震が多いから長持ちしない」ということは、すべて戦後の経済成長期の話です。建物は長持ちさせることができるし、価値が落ちない状況も他国で実現できています。
省エネ性・断熱性を最高水準のレベルで追求しておくことが、「長く住める」また「価値が落ちない」ことに直結するということをお伝えしてきましたが、こういった要件を満たした住宅は初期コストが10%から15%程度多くかかります。しかし、ここで投資した分は必ず報われます。
なぜ報われるか。理由のひとつは、健康寿命です。日本では年間、室内で亡くなる人が3万人程度と言われ、その大半はヒートショックです。死亡の数値に入っていなくても、寝たきりの人もたくさんいます。健康ということだけを考えても、省エネ性・断熱性を追求するのは十分見返りがあります。
また、目に見えるコストという点では、「生活コスト」が大きく変わります。高い省エネ性の家とそうでない家を比較してみると、エネルギー効率の違いは歴然で、逆に儲かる家をつくることも可能です。
そして何より、建物はめっぽう「水に弱い」ものです。省エネ性・断熱性の高い住宅は結露しないので、建物が長持ちします。
不動産投資の世界では常識になっていますが、住宅のコストは「イニシャルコスト」と「ライフサイクルコスト」の両方で考える必要があります。
一般ユーザーが家を建てる時には「少しでも安く、いいものを」と初期のイニシャルコストである建築費、建築坪単価などに目がいきがちです。ところが、当初の建築費は、建物の一生にかかるライフサイクルコストと比較すれば、小さなものです。
木造や鉄筋コンクリート造など、どのような造りでも、現代の技術で普通に設計・工事をして、点検メンテナンスをしていれば、100年以上は住めます。子どもの世代まで残すことができる、または資産性があるということです。
初期投資のコストを削って30年程度で住めなくなるのと、生活コストの低い住宅に100 年以上住めるのと、どちらが良いかは明らかだと思います。高い基本性能を追求できる工務店を見極めて、価値ある住まいを残していきたいものです。
※本記事は雑誌「だん05」に掲載されています
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株式会社さくら事務所会長。さくら事務所創業者・不動産コンサルタント。
1999年に業界初の個人向け不動産コンサルティング会社「不動産の達人 株式会社さくら事務所」を設立。2008年NPO法人ホームインスペクターズ協会を設立。
著書に『「空き家」が蝕む日本』(ポプラ社)、『不動産格差』(日本経済新聞出版社)ほか多数
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