木造住宅建築の主要部材(梁、柱、土台等)として利用されている構造用集成材について、現在、価格高騰、調達困難の状況が生じています。
そもそも構造用集成材などの木材の売買契約は、種類物売買契約と言います。すなわち、一定量の同じ種類の物を売買等の引き渡しの対象とする場合、その物を「種類物」といい、当該種類物の引き渡しを受ける権利のことを「種類債権」といいます。
種類物ではなく、「特定物」であれば世の中に1個しか存在しないので、滅失してしまえばその物の引き渡しを受ける権利は消滅することとなりますが、「種類債権」であれば、世の中に同じ種類の物が存在する限り、引き渡しを受ける権利は消滅しません。
すなわち、引き渡し対象の「商品」を調達してきて、引き渡し義務を履行する準備を整え、約束を果たさなければなりません。ここに難しい課題が存在するのです。
これからの契約でも合意書を交わそう
現在の状況では、調達困難品を調達するのに、通常以上の時間がかかるリスクがあり、樹種の変更や工期延長をしなければなりません。また、木材価格も高騰しています。
戸建て住宅でも、中・大規模木造建築でも、発注者と受注者の請負契約締結時に想定した構造用集成材の価格(請負契約における見積書明細に記載される)と、建築会社が建材販売店やプレカット工場に発注する時期が異なるため、前者の価格を後者の価格が上回るリスクが生じます。
4月7日、新建ハウジングDIGITAL上で「契約済み物件の顧客」と締結していただきたい合意書の書式を公開しました。樹種や工期、請負代金の変更について、施主様から合意を得るための書式です(コチラ)。
記事の公開後、大きな反響と感謝のお言葉を多くの工務店の皆様からいただきました。同時に「これから請負契約を締結する顧客との間で締結すべき合意書の書式はないか?」というお声も多く寄せられました。今回は、これから契約する場合に用いる書式を作成いたしました。ぜひご活用ください。
しかし、住宅業界の法的課題が次々と出てくる現状に驚いています。この1年だけでも民法改正対応の請負契約約款への切り替え、新型コロナ対応の特約条項、電子契約、建築現場のDX対応、そして今回のウッドショックなど、多くの法的課題に直面しました。この新たな課題を一つ一つ乗り越えていきましょう!私も、今回のような書式提供をはじめ、皆様を精一杯サポートしていきたいと思います。
これから契約する場合の合意書の書式例>>>合意書(請負契約時締結時)【Word】
匠総合法律事務所代表社員弁護士として、住宅・建築・土木・設計・不動産に関する紛争処理に多く関与。2018年度より慶應義塾大学法学部教員に就任(担当科目:法学演習(民法))。管理建築士講習テキストの建築士法・その他関係法令に関する科目等の執筆をするなど、多くの執筆・著書を手掛ける。一般社団法人日本建築士事務所協会連合会理事・法律顧問弁護士。一般社団法人住宅生産団体連合会消費者制度部会コンサルタント。
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