新建ハウジングが運営する工務店向けオンライスクールサイト「チカラボ」から、工務店の経営者や実務者に役立つ記事をお届けします。
今回は、吉岡孝樹さんの「『小なれど一流』を目指す社長への【選ばれる工務店への道】コラム」ルームからの記事です。
大学卒業後、アパレル企業を経て住まいに関わること30年。自ら住みたい家に暮らし、同じ価値観でお客様にも提供する仕事がしたくて2000年鹿児島に移住し“日本一の工務店”と名高い 株式会社シンケンに入社。その後、2002年自宅を新築、2010年著書『家づくりの玉手箱』発刊。本作は、氏の個人的営業トーク→シンケンHPのブログ→書籍化というプロセスで生まれたもので、全編にわたり新鮮な住まい手目線の写真と文体で表現され読者から絶大な支持を得ている。SNS時代にも通じる住宅コンセプトブックの金字塔とも言える一冊。2019年に株式会社家づくりの玉手箱を設立、『工務店の参謀』としての活動を開始。…
忘れ得ぬひと言 その1-1 からつづく
三次会にて
大阪から鹿児島に移ってきて、自宅を建ててもらってからしばらくすると、県外の同業である工務店さんの社長・幹部の面々が見学にお見えになることがしばしばありました。入居後、だんだんと生活感が出てくるのに従って我が家も見学コースに組み込まれることも増えてきました。その日は、朝から物件視察、午後から講演会をこなし、夕方から懇親会が始まって各地の工務店さんの若手幹部メンバーの皆さんと「もう一軒行きましょう!」ということに。
そうして少し歩いて、三次会はしっぽり照明の暗~い感じのバーに。もうかなりいい時間ですから、お客さんもまばらです。
鹿児島での視察会には度々お見えになっているOさんが、3度目の乾杯のあと口火を切りました。
「さっき二次会でシンケンの社長さんから、「キミは何回鹿児島に見にきたの?」って聞かれまして。かれこれ6回目です。。。なかなかシンケンさんのようには出来ません。とお答えしたら、「6回も来て出来ないんだったら一生できないでしょ。もう来なくてもいいんじゃないの?」って言われちゃいましたー汗」との事で、Oさんは「いやーっ」と頭を掻いておられていました。他の方たちも同じようなことを言われたーっ」と大いに盛り上がり、Oさんはさらに続けました。
ナッツをひとつまみして洋酒のロックをぐいぐいやってから「鹿児島に来るたびに刺激をいただいて、すごいなー。こんな家づくりがしたいなー。よしがんばろう!と毎回心に誓って帰るんですけど、喰えちゃうんですよねー そこまでしなくても・・・地元に帰ると、つい忘れちゃうんですよ。いつも。」
「喰えちゃうんですよねーそこまでしなくても・・・」
これには、相当な衝撃を受けました。
↑鹿児島の夜は熱い話とともに更けていくのでした
身に覚えのある「ひと言」
かなりの酒量と上司ぬきの酒場話が、ある本質をついていることに目が覚める思いでした。そう言われてみれば・・・大阪にいる時はそうだったよな・・・自分でも重なるものがあったからの衝撃だったのだと思います。
その後Oさんはエンジン全開になり、途中かなり脱線しましたが色々なお話をしてくださいました。ポイントとしては、
①若い頃は自分なりにお引き渡しする住まいに対して ”こだわり” を持って仕事をしていた
↓
②そのために「夜討ち朝駆け」で現場に通って様々な問題に向き合ってきた
↓
③最近入社した若い社員に自分たちのような働き方は強いることはむずかしい
↓
④それでも会社の利益確保は続けないといけないから、社員みんなが誰でも扱える家になってしまう
他の皆さんもそれぞれの会社で幹部の方々で、「そうだよねー」と深く共感されていました。
そして、Oさんは続けます。「もうける」「かせぐ」ことが目的であればあるほど、マーケット(市場)が「豊か」であればあるほど、「競合」が激しければ激しいほど、お金を払ってくださるお客様にちゃんと酬いる仕事をするということが難しくなってしまうのだと言われるのです。
うーーん。とても深い。確かにそういう面はあると思います。口でいろいろ言ってはいても、これはひとつの真理かもしれない・・・とそのときの私は感じた訳です。
市場が厳しいと仕事が丁寧で市場が豊かだとお手抜きだということは、競争条件も違いますし必ずしも当たらないと思いますが、お客様に報いる志があってもついつい競争に勝つことやまわりの空気に影響されて「忘れてしまう・・・」という傾向は確かにあるような気がしたのです。
これは、多くの経営者・幹部の方々が日々悩まれている事かもしれません。それでは、何を目的にすればいいのでしょうか?創業時の純粋な目的が変貌してしまい、会社の存続・維持が目的になってしまっては遅かれ早かれ苦境に立つことになるのは、様々な史実から見ても明らかです。時代とともに変わりゆくものはありますが、常にお客様から必要とされる事業の目的を持つことは経営者の責務です。
あなたは何を目的に今の仕事をしていますか?会社の維持、従業員の生活を守ることが目的になってしまっていると感じていませんか?
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