2.打ち合わせが楽しみ!と思ってもらえる関係
悩まれている雰囲気がひと目で伝わってくる相談者様にお会いしました。注文住宅は、自分たちの夢と希望を形にする楽しいイベントのはずなのに、ご夫婦揃って暗い表情でした。
数ヶ月に渡りずっと間取りの変更を繰り返し、仕事中も頭から離れないモヤモヤした状態に疲れ果てていました。
入居希望日から逆算すると間取りの決定リミットが近づいているのに、何度新しい間取りに変えてもらっても決まらないそうです。
「リビングに収納がひとつもないので、片付けに困る気がします!解決策として階段の位置を変えて、玄関脇に設置される二つの収納の壁を取ってひとつにしてもらえないか言おうと考えていますが、どう思いますか」と、開口一番に話されました。
最初の間取りを基に、いろいろなところを書き換えてもらっても気に入らないため、全く新しく間取りを提案してもらい10回目でも収納に不満があって相談にいらっしゃいました。
1階のこの場所を変えてもらったら、2階の間取りが使いづらくなったとの話しから、お施主様の希望を叶えているうちに、家全体の使い勝手が悪くなったのではと想像できます。
家の階段の位置や、窓のサイズといった建物自体の変更を希望されているようです。
「相談しながら良い間取りにしていこう」というより、完全に指示をする側と依頼を受ける側の関係になっているようでした。
3.詳細なヒアリングが、時短と効率アップにつながる
お話を伺うと、家に対しての希望はお風呂のサイズやキッチンの形、部屋の数といった建物への要望のみで、暮し方や物、気持ちについては一向に出てきません。
「新しい家ではどんな暮し方をしたいですか」と私が伺いますと、「部屋には何も物が出ていないスッキリした状態の家で暮したい」と言われました。
そこから今の家の状態への不満、ご夫婦間での片付けについての価値観の違いと話は続き、ご夫婦が望む暮し方が伝わってきました。
やり取りから、施主側も担当者も建物(外側)に気を取られ、暮し方(中身)についての話をしていないことが間取りの決まらない原因のひとつだと分かりました。
家づくりは素人が口を挟まず専門家へ任せるところと、生活者にしか分からない・出来ないことの線引きが必要だと思います。
間取りを自分で作成できるアプリもありますし、建物への情報も多いため、任せる境界が分からなくなりそうですが、柱や壁を動かす希望ではなく、日頃の家事動線や収納したい物を伝えたうえで、暮しにあった提案をしてもらうことをオススメしました。
収納したい物や生活スタイル、日頃の動線といった情報をお聴きし、その希望が叶う具体的なプレゼンをすれば間取は決めやすくなると思います。
ヒアリングの時間は余分にかかりますが、早い段階から詳細をお聞きしたほうが暮しに合わせた提案が作れます。
4.ハード面の質問や打ち合わせが続くと希望が入っても不満になる
家は物ですが、お施主様が買いたいのは家と暮しです。
間取りと暮らしがピッタリ合うことで使い勝手が決まり、家への満足度が上がります。
私が家を建てた時もハード面の質問ばかりが続いたので、「自分が指示して建築士が図面に書くの?」と違和感がありました。
最後に「コンセントの位置を決めてください」と言われたときは、「我が家の暮しに最適なコンセントの位置を教えてほしい」と思いました。
コンセントの位置は収納コンサルで確認していきますが、私と同じ様に思われている方がいらっしゃいます。
5.繰り返しの質問で気持ちを整理すると、不満な間取りの解決策が見つかる
ご家族全員のいまの暮らし方と物の確認をしながら、間取り図へ収納先を決めていく地図(収納マップ®)を作成し生活をシュミレーションしました。
間取りへ物を配置して、量を確認していくだけでどこへどれくらいの物が収まり、足りなくなるのか見えてきます。
持っている物の収納先が全て分かれば安心できますし、生活動線や家事動線を確認すれば使い勝手が良いところと悪いところの判断ができるので変更箇所の迷走が無くなります。
決まらない間取への不満な気持ちも整理すれば、解決方法は見えてきました。
◇お施主様の不満と不安
・この間取りは生活しやすいですか
・キッチンの背面収納はどうすればいい
・パントリーが無いけど、背面収納で食品は収まる
・リビングに収納が全く無いけど、家具は置きたくない
・脱衣所に収納がひとつも無い
・洗面台はどんな物を選べばいいの
いま片付けに困っている方には「これなら楽に片付く」と思える提案をしてあげると安心されます。
お施主様には、最初から建物の変更箇所を依頼するのではなく、変更理由と暮し方の希望を伝えると全体の間取りが崩れることなく理想の提案がされていくと伝えました。
お施主様が間取り変更をご希望されたら、「どうしたいのか」ではなく、「なぜそう思ったのか」「どう暮したいのか」「どう使いたいのか」と聞くことでお施主様の気持ちが整理されます。
理想の暮しを叶えるための質問で、楽しく家づくりをしていただけたら幸いです。
———-
整理収納の基本理論を基に生活者目線で収納提案に役立つ内容が学べる、住宅収納スペシャリスト資格講座をオンライン(Zoom)で開催しています。
オリジナルの「分類ツリー」と「ヒアリングシート」は、実務に役立つと好評いただいております。
住関連事業・資格者コースは1日で取得できます。
———-
▼川島マリさんの他の記事はこちらのルームから▼
「心地よく住む研究会 [片付けやすい収納提案]」
▽「チカラボ」とは?▽
https://chikalab.net/about
▽チカラボ公式サイトはこちらから▽
Pages: 1 2
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。