検索で出てきた物件をもう少し見てみます。相変わらず不動産情報としてのサイトには敷地の方位や建物の配置が掲載されているケースは稀です。団地内の新築情報を見てみると、最近どこに行っても見かけるスタイルの家が出てきました。土地面積は70坪弱です。転売された土地に私がお世話になっていた「分譲主」とは違う会社が建てるもののようです。建築中なのか外観は着工時の現場写真や別の場所の建物の写真です。あまり情報を出さず、とにかく案内のアポを取る戦法のようです。
まったく庭木もアプローチもないセメント塗りきりの外構仕上げ、丸見えの掃き出しサッシ、根拠なく決められた目立つ屋根勾配などは値上がり期待のない土地に建つ、”ベストプライスプラン”と言えます。ベストプライスプランとは、販売価格を下げても利益が残るよう最も安く建てられる販売リスク低減プランです。こんなのが建て替えなどで、どんどん建つのかと思うと複雑な気分になります。
↑団地内の新築物件の間取り。駐車台数が売りのようです。造園は模様のようになっています。
↑現在建築中のようです。「外観写真」こんなのありなんでしょうか?
↑左上表記の「同形状」はうそだと思います。こんなのありなんでしょうか?
発展停止の「分譲住宅」 思考停止の「注文住宅」
機能的で美しい強靭な高層ビルを早く確実に建設する技術やノウハウなどは大幅に進化したと実感できるのに、なぜ住宅の間取りや住み心地は進化していないのでしょうか?それほど難しいことではないと思うのですが、住宅業界全体がやれるはずなのにイノベーションをやってこなかったから、今業界のみんなで苦労しているのかもしれません(そのような気がしてきました)。この中でも分譲住宅の功罪は大きいものと思います。しかし、もっと大きいのはその分譲住宅をコピペしたような注文住宅を建ててきた業界の姿勢かもしれません。
改めて見ていると、市場で売られている住宅の間取りはバブル時代とさほど進化していません。売る側の経済原理から追求され、完成されたものとも言えます。住む人にとっては賃貸住宅とそうは変わらない「ポンコツ」です。性能面は向上しているのでしょうが、こう「ポンコツ」ばかりではいつまで経っても豊かな住宅ストックの形成は期待はできないかもしれません。「分譲主」の建てた建物の中古物件で「新星和不動産株式会社旧施工の注文建築!」という表記を見つけました。まだ団地内で「分譲主」の信頼が残っているようです。もう20年も前に辞めた会社ですが、嬉しいものです。
相場は常に変動するものですし、日本中ほとんどの場所の地価の先行きは低下傾向です。住まいづくりを生業としている者としては、将来、古くなっても「ぜひともこの家に住みたい」と言ってくれる人がたくさんでないにしても確実に現れるものを残したいものです。買い手は1人いれば売買は成立するのですから。「家」に「建てた会社の看板」はついてはいませんが、あなたが今取り組んでいる家はおそらくその場所に数十年在り続けるはずです。願わくば多くの人の目に触れ、次の仕事を生むものになると「つくり手名利」に尽きます。どの道それぞれの現場で苦労して建てるのなら、携わってくれた仲間と共にそういう未来を味わいたいものです。
皆さんは、『高級』とされている住宅を見て「こんなに高いのに、これ?」って思ったことありませんか?そして、ひるがえって自社の売り物である住宅は古くなってなお、選ばれるような住まいになっていますか?
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