丸富建綜(太田富次郎社長、静岡県浜松市)は、地元の天竜杉をふんだんに使用した車庫1台分ほどのスペースからなる板倉造りのユニット式ハウス「とみくら」を発売した。新しい生活様式に対応した同社の暮らし提案の一つとして位置付ける。このほど同社の庭先にモデルハウスが完成した。現在25組の問い合わせが入っているといい、社長の太田富次郎さんは「まずは月に1棟のペースで年間12棟売りたい」と意気込む。
コロナ禍で、建て替え客がメインの同社の売り上げは8割減にまで落ち込んだ。「50代の建て替え層がメインターゲットの当社の顧客は、地域がら、自動車関係の職業についている人が多く、先行き不透明な現状で様子見をする客が増えた」と太田さんは話す。
売り上げを何とかして回復させたいと考えた末に開発したのが同社の売りである伝統工法の板倉造りで建てる「とみくら」だ。材は地元天竜杉をふんだんに使用している。
コロナ禍で不要不急の外出自粛を強いられている生活者を思い、少しでもおうち時間が充実したものになればとの思いで太田さん自ら設計図を描いた。
内装は全て天竜杉仕上げで、天井・壁は30mmの杉板をはめ込んでいる。断熱材は杉板で挟み、屋根は化粧垂木に杉板施工をし、その上にプラスターボードを施して屋根下地用に地域材のベニアを張った。出入り口のドア、木製窓、外壁材、デッキなど多くのオプションも揃えている。工期は、構造体を工場でプレカット加工して現地で組み立てるため、基礎工事から完成まで2週間ほどと短工期を実現した。
建築確認申請が不要なサイズで、また金額が明確なほうが顧客にとって安心だとして、4.5帖タイプ(148万5000円~)と6帖タイプ(192万5000円~)の2タイプを規格品として販売しているが、基本は庭の広さに合わせて作ることができるフリー設計だ。
新しい生活様式に対応した同社の暮らし提案の一つとして位置付けるほか、自粛生活を強いられている生活者がDIYで楽しみながら自分の部屋を作れるようにと、一般客へのキット販売も計画している。コロナ禍で売り上げが落ち込んだ工務店の力になれればと、工務店にはノウハウをマニュアル化して無償提供する。
2月下旬、モデルハウスが完成すると、その後2週間で25組の来場希望などの問い合わせが入った。「モデルハウスに入ると木のぬくもりや癒しを五感で感じられるようで、みんな口々に、『木の家は良いね』『はだしが気持ちいい』と笑顔になる」と言う。
同社は25年ほど前から板倉造り一本で年間4棟ほどの新築を手掛けてきた。これまでも、アトピー性皮膚炎の赤ちゃんが同社の板倉造りの家では泣くことなくスヤスヤと眠ったというエピソードもあるなど、自然の木でつくる板倉造りの家がもたらす効果には自信を持っていたという太田さんだが、モデルハウスの顧客の反応を見て「これはいける」と確信を深めたという。
モデルハウスはこれまで持たなかった同社だが、「とみくら」のモデルハウスが完成したことで、同社が手掛ける板倉造りの家のモデルハウスとしても利用できるとして、「とみくら」と共に板倉造りの家の受注にもつなげたい考えだ。
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