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家の寒さは健康を左右する大事な要素。ひとりの住まい手として、断熱リフォームを経験された星旦二先生(首都大学東京名誉教授)に、住環境と健康の関係、そして暖かい家に住むことの利点を解説していただきました。
前編はこちら
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高断熱住宅で病気が改善する
健康を損なう大きな要因である家の中の温度差をなくすには、断熱性能を高めることが不可欠です。
私たちがこれまで行ってきた調査からは、温熱環境が良好な高断熱住宅に転居すると、病気になる人が減少することが判明しています。脳血管疾患は1.4%から0.2%に、心疾患は2.0%から0.4%に、糖尿病は2.6%から0.8%に、アトピー性皮膚炎は8.6%から3.6%にと、どの疾患も明らかに減少しています。
なぜ高断熱住宅に住むと、病気になりにくくなるのでしょうか。例えば、アレルギーが改善するのは、カビやダニの原因になる結露が発生しなくなるからです。高血圧が改善するのは、末梢血管が広がって血圧が安定するのが理由です。糖尿病が良くなるのは、体温が上昇して循環が良くなり、糖の代謝が正常化するためなのです。
「ゼロ次予防」には住まいの性能が必要
私が専門とする予防医学の分野では、病気の発生そのものを防ぐ“一次予防”、病気の早期発見・早期治療に努める“二次予防”、再発を防止する“三次予防”の3段階で疾病を防ごうという考え方が一般的です。30年前から、私がこの3つに加えて提唱しているのが「ゼロ次予防」の概念です。生活環境、社会環境、自然環境を整備して、疾病をより本質的に予防しようという考え方です。もちろん、住環境もここに含まれます。
日本で行われている脳血管疾病への対策は、減塩などの食生活改善、あるいは運動のように個人レベルで実施する一次予防と、健康診断による早期発見や血圧測定という二次予防に限られています。しかし、個人の努力だけで健康を維持するのには限界があります。疾病を根本的に防ぐには、住まいの断熱性を高めて、屋内の温度差を解消することが最も重要なのです。
“年金1億円”を目指して住まいに投資しよう
住宅環境の改善を、健康長寿のためのゼロ次予防と捉えると、セカンドステージ世代のリフォームには、断熱性を向上させる工事は欠かせません。とはいえ、断熱性が高まったと言っても、その効果は目に見えにくいもの。費用対効果が気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
高断熱化の効果は、エネルギー消費量の削減を光熱費に換算して割り出すことが多いですね。ただ、そこに「健康長寿のための投資」という観点を加えてみると、費用対効果はぐんと向上します。
100万円をかけて断熱改修をした場合、何年で工事費用を回収できるかを試算してみたことがあります。光熱費だけで考えると、100万円を回収するのに28年かかるのに対し、健康が維持されたことによって得られる価値を加算すると、16年で回収できるという結果になりました。健康保険からの公的負担も加味すると、わずか11年でした。健康で暮らすためにリフォームをすると考えれば、人生のための「投資」だと言っても過言ではないでしょう。
90歳まで夫婦そろって健在だとすると、年金の総受取額は1億円に達することをご存知でしょうか。私たちの調査では、冬場の脱衣所の室温が2℃高くなると、健康寿命が4歳延びるという結果が出ていますが、この4年間を年金の額に換算すると、なんと1200万円になるのです。
リフォームで温熱環境を改善すると、病気になりにくい住環境が手に入ります。健康で、長生きすることができれば、先ほど述べたように、とても大きな経済的メリットを得られるのです。断熱リフォームの費用をそのための先行投資と考えたら、ずいぶんとお得な話だと思いませんか。
※本記事は「だん05」に掲載されています
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