輸入住宅事業からの大改革
大工派遣・土地なし客対策など勝ち残り支援も
世界最高レベルの環境基準を持つカナダ輸入住宅のFC(フランチャイズチェーン)本部を務めるセルコホームビジネスパートナー(以下、BP)事業部(仙台市、新本恭雄社長)では、来年4月から非住宅とリノベーションの分野で専門VC(ボランタリーチェーン)を本格的にスタートさせる。
本年4月から加盟店募集を始め、それぞれの経営実態に合わせた支援スタイルを1年間の試行期間の中で決定していく考えだ。1月21日、仙台市本社で川村勝範取締役BP事業部長に話を聞いた。
安価な輸入住宅を主導
新設住宅着工戸数で木造住宅の22%を占める枠組壁工法(2×4工法)の住宅は、カナダが発祥の地。柱で家を支える在来の木造軸組工法に対して、面で支えることで外部からの力に圧倒的な強さを発揮する枠組壁工法として阪神淡路大震災や東日本大震災など過去の大震災でもその実力を実証してきた。
セルコホームは、商社経由の輸入が一般的だった25年前、本格的な輸入住宅の普及を目指し、枠組壁工法とともに良質な無垢のフローリングやドア、PVC(樹脂製)サッシ、アルゴンガス入りLow-E加工ペアガラスなどの建材をカナダから直輸入し、合わせて全国の工務店に安価な輸入住宅を普及するためVC事業を始めた。直輸入を主導してきた当時の新本社長は、「性能が高いが価格も高いでは意味がない。いかに安価に高品質な住宅を供給できるかだ」が口癖だった。
その後、輸入住宅は国内で圧倒的な性能と魅力的なデザインによりブームを巻き起こし、国内産業の省エネ、耐久、耐震といった性能向上に寄与してきた。セルコホームにおいては、加盟店の教育システムや指導内容を充実することでFCへの転換を図り、輸入住宅を扱う企業が廃業や業務縮小を余儀なくされる中、昨年は直営店で年350戸、BP加盟店で約400戸の実績を残してきた。今後は他社OB客のアフターや、ストック拡大とともに高まるリノベーションへの要望に応えていくことが業界を主導してきたセルコホームの使命となる。
新2×6枠組壁工法を開発
最近のセルコホームは、2×4の2.5倍の強度を持つ2×6パネルをベースとする構造体の改革を進め、「新2×6枠組壁工法」を開発し、加盟店の勝ち残り支援強化を進めてきた。工場でフルパネルのプレハブ化を実現し、現場では「1日上棟」を実現することで、工期短縮やコストダウン、職人不足解消を実現するFBS※(ファストビルドシステム)工法の開発によってセルコホームの施工精度はさらに高まった。
FBSを中心とするさまざまな工法改革の成果として生まれた「新2×6枠組壁工法」については、昨年度から全国各地で上棟の現場公開を始めている。FC本部からは構造体や部資材だけではなく、工務店に同工法の施工に長けた大工を派遣する支援も進めており、すでに全国の8割のエリアをカバーする5か所の大工チームが配置済みだ。新工法の採用は職人不足で新規参入を憂慮する工務店にとってもハードルを低くする効果がある。
ネットワークパートナー構想
セルコホームBP事業部では、セルコホームが持つ専門分野の強みを生かした今後の展開として、「セルコホームネットワークパートナー構想」を掲げている。構想は不動産と非住宅、そしてリノベーションの3本柱からなる。セルコホームBP事業部長の川村さんは「顧客からの問い合わせの7割前後が土地なしのお客様。地場を知る不動産企業と加盟店、セルコホーム本部の3者が提携してタッグを組むことで、新たな土地紹介システムを昨年から試行している」という。多くの不動産業者へ希望条件を流すだけの土地探しに対し、顧客に素早く良い土地を紹介できるシステムで、加盟店では土地セットでの契約が決まるケースが出始めている。
一方、加盟店からBP事業部に要望が高まってきたのが、セルコホームが直営で実績を伸ばす特建事業と改修事業のノウハウ提供だ。
「ここ数年は大スパンの大型倉庫など年間約30棟前後の非住宅分野の施設建築の実績がある。海外からレンガをはじめとした部資材調達などでも他社を圧倒できているので非住宅とリノベの専門VC化も十分可能だと考えていた」と川村さん。
セルコホームでは非住宅部門の専門VC化によって、CLTを含むあらゆる構造体のほか、設計と意匠支援などをセットで提供する考えだ。リノベーションのVC化については、「欧州やアメリカなどに比べ物価が安いカナダや豪州などからグレードの高い素材や部資材を直輸入できることで、高所得者層にも受け入れられている点から見ても大きな差別化材料となることが想像できる」と川村さん。また、「安価な部資材だけの供給も可能になるため、大規模改修を伴う様々なリノベーション事業に供給できる」と代理店の独自性を強めることも可能だとした。
今年4月からは専門VCの新規加盟店募集が始まる。住宅FC事業を中心に1年の試行期間を経ながら建築業界を勝ち組に変えていく「決め手」と考えているようだ。
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。