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日本の幼保園に高気密高断熱の木造園舎を広めようと活動をしているG proportionアーキテクツ代表の八納啓創さんに、その理由をお伺いしました。
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10年先をいく北欧の幼保園の実態
2016年に北欧に就学前学校(日本の幼稚園や保育所)の施設見学に行きました。日本の幼保園よりも10年以上先をいくという話を耳にし、その実態を調査し、設計中だったこども園にその要素を盛り込むためでした。
建物はすべて高気密高断熱で作られています。窓にはトリプルガラスの木製サッシが標準装備。地域の一カ所でお湯を沸かし、それを施設まで引っ張って使う地域暖房というシステムなどもあり、さすがに北欧だと実感しました。
本当に環境と共生するライフスタイル
特にフィンランドの就学前学校を視察した時に、衝撃的場面に出くわしました。それは、0~1歳児の子どもを屋外の乳母車で寝かせている光景でした。
なぜ、そんなに衝撃的だったかというと、「マイナス5℃までどんな季節、気候でも外で寝かせている」とのことだったからです。日本では虐待扱いされそうですが、施設の先生に聞くと「3歳児までに、フィンランドの気候に適応できる肺と心身をつくるため」と真顔で答えられたのが印象的でした。逆に、この年齢の子を屋内で寝かせていると保護者からクレームが出るくらいだというのです。
何のための高気密高断熱環境なのか?
それ以外にも、フィンランドの就学前学校では、朝から晩までほとんど外で活動をさせます。白夜の関係で、朝10時に明るくなって午後3時過ぎには暗くなる季節もありますが、明るい時間は、雨が降ろうが雪が降ろうが、ずっと外で遊ばせるのです。
なぜかというと「自然に適応させる身体をつくるため」ということと合わせて「自然のすごさ、大切さを肌身に実感させるため」といいます。さすがに厳しすぎる環境では暮らせない。だから、住環境は人の身体に優しいものをつくることが重要だというのがフィンランドの住まいに対する考え方です。もちろん地球環境に貢献できる高気密高断熱ですが、その気候風土に馴染みながら生きていくための素地をつくるうえでも非常に重要だということに感銘を受けました。
快適で豊かな環境のメリットとは?
「日本にもこのような考えの幼保園を実現したい」という思いと、「子どものころから快適で豊かな環境が、人として生きるのに当然の環境だ」という子ども時代を送ることができる環境を増やしたいという思いがありました。
それだけではなく「屋内環境が安定しているので、子どもたちの精神面が安定しやすくなる」「光熱費などの維持費や15年後ぐらいにやり替えが必要なエアコンなどの設備投資費を抑える」といった狙いや「冬も寒くない園舎は離職率を下げる効果がある」ということや「加湿をしっかりすると季節性インフルエンザを劇的に抑えられる」という効果が望める部分もありました。実際に1月にインフルエンザにかかった園児が50人いたのに対して、加湿器を導入したところ、2月は5人までに減ったという報告を受け、高気密高断熱施設の効果も実感しました。
木造耐火の幼稚園やこども園などを数園設計
2014年にQ値1.2W/m2K、C値0.5cm2/m2の木造耐火幼稚園を完成させました。まだ全国でもほとんど例をみないという960m2の在来木造2階建ての施設です。それを皮切りに、木造耐火3階建ての900m2の高気密高断熱のこども園を設計したり、現在では1000m2を超える、木造耐火2階建てのこども園を山口県にも設計中で、全国からも問い合わせが相次いでいます。
完成した園では、保護者から「冬、知らずに厚着をさせて行ったら、あせもができました(汗)。はじめはビックリしましたが、真冬でも長袖一枚ぐらいで過ごせるのはすごいです」。園からは「以前は毎月6万円くらいかかっていた光熱費が、半額の3万円程度になりました。年間30万円以上の差額ですから本当に助かります」といった声や、「木の温もりや香りがするので、とても安心して過ごすことができます」「大きな空調機でなく、ルームエアコンで対応できるのもビックリ。初期の設備投資費も下がってありがたかった」という声をいただいています。
このように、園でも住宅の高気密高断熱化と同じような成果をあげています。繰り返しになりますが、これから未来を担う子どもたちが、こういった豊かな環境で生活することがスタンダードになることが、他の先進国の豊かな暮らしに追従するきっかけになると確信しています。個人的にも園や住宅などの設計活動を通じて豊かな環境づくりをどんどん広げていきたいと思っています。
※本記事は「だん06」に掲載されています
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