3階建ての学校の木造化に向けた実大火災実験が2月22日、国土技術政策総合研究所(国総研、つくば市)の敷地内で行われた。会場には実験関係者のほか、一般の見学者や報道関係者約700人が集まった。実験は出火から2時間半で、予定より3時間早く終了。実験後の速報説明会で、実施主体の早稲田大学理工学術院の長谷見雄二教授(防災工学)が「実大実験でなければわからない貴重なデータが取れた」と一定の評価を行ったうえで、炎の燃え広がりを抑えることなど、今後に向けての課題を挙げた。得られたデータをもとに、基準の見直しに向けた仕様などを検討していく。
今回の実験は2012年度に実施予定の本実験に向け、基礎的なデータの収集を目的とした予備実験という位置づけ。実験に使用した建物の延べ面積は2200m2と、こうした火災実験では、国内最大規模で、世界的にも例がないという。試験棟は、1時間準耐火構造で設計・施工。学校を想定した開放的な空間の多い構成で、火の回りは共同住宅などに比べ早くなるという。
長谷見教授は、構造的には仕様通りの性能を確認できたとしながらも、火の回り方は予想以上に早かったとの感想を述べた。また、その要因として実験の性質上、室内の可燃物の量を少し多めにしたことや、着火にアルコールを使ったことなどの影響を挙げたうえで、早い燃え広がりの原因となったと考えられる窓からの噴出火炎に対する対策の必要性を指摘した。
試験の状況
試験地のつくば市は朝から快晴。建物は軸組み工法(中央と東側)とツーバイ工法(西側)の混合。午前9時に中央部1階にある職員室部分の火源に、職員が火をつけて実験を開始。
開始から約3分で火元の職員室の窓ガラスが割れて炎が外に噴出し始めると、6分後に2階、8分後に3階まで燃え広がった。17分後には建物の内側から防火壁を越えて建物東側部分に延焼。22分後には、ツーバイ工法で建てられた西側部分にも延焼した。
実験開始から1時間18分後に出火部分を含む校舎の中央部分が崩落、約1時間30分前後で西側のツーバイ部分の壁などが倒壊した。1時間36分後に防火壁が崩落すると、最後まで残っていた東側部分も約2時間後には崩落した。
開始から2時間半の時点で、当初の想定よりも3時間早く消火活動を開始した。
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