新建ハウジングが運営する工務店向けオンライスクールサイト「チカラボ」から、工務店の経営者や実務者に役立つ記事をお届けします。
今回は、青木隆行さんの「工務店リアル経営」ルームからの記事です。
株式会社ソルト(SOLT.)代表取締役。経営アドバイザー/MBA。1972年・山口県防府市生まれ。2002年~2019年まで、株式会社銘建(MEIKEN)代表取締役。さくら銀行(現三井住友銀行)を経て、家業であった工務店を事業承継。銘建では、『ライフスタイル型工務店』『一気通貫経営』を提唱。事業規模を2.7億円から23億円へ拡大。2016年より多角化(機能回復型デイサービス・不動産賃貸・民泊・食品物販)展開。2019年M&Aにより事業譲渡。現在は多角化した会社を経営しながら、経営アドバイザーとして全国の工務店・中小企業への支援を行っている。
ソルトの青木隆行です。前回は初回に続き、なぜ経営理念が大切なのか?をお伝えしました。経営理念が必要なのは、すべての活動の根本的な拠点になるからですね。どのような理念が工務店に向いているのか(もちろん正解はないですが)といった話は前回を読んでください。
今回は次のステップとして、経営戦略の具体的な内容に入っていきます。経営戦略とは理念の落とし込みです。
最初に、経営戦略には(1)設計(2)実行(3)評価と3つのフェーズがあります。そのうち、①設計段階について大切なことをお伝えしていきます。
「嗅覚経営」はコンセプトのない家のようなもの
さて、経営者として自身の過去を振り返ると、どれだけ『運と勘』でやって来たのだろうかと恥ずかしくなる時があります。
詳細は割愛しますが失敗した事も多いです。中小企業経営者のなかには、私と同じような運や勘の『嗅覚経営』が少なくないのではないでしょうか。もちろん独特の嗅覚や感性こそ成功の大きな要素でありますが、再現性を高め継続的な成功を収めるという観点ではやや分が悪いです。従って、「経営理念」をもとに環境変化にも柔軟に対応できるだけの準備が必要となります。その根幹をなす基本構想が経営戦略です。
経営者は日々の実践と共に書籍・ウェブ・セミナー・同業者・経営コンサルタントなどから情報を得て、自社の経営品質向上に繋げていきます。その連続によって、自社のオリジナリティを高め、価値を上げていく活動をするのですが、俯瞰してみた時に、または長期的に見たときに、ある意味断片的な情報の積み重ねによっていびつな形をなすときもあるもの。つまり、現在の経営品質が本当に自社の理念に適っているのか、また限られたリソース(人・モノ・カネ)を効果的に活用しているのかを定期的に評価する必要があります。
例えば売上・利益が欲しい、余剰資金を運用したいといった誘惑に駆られた時に、えてして『落とし穴』が待っているものです。経営をしている以上、当然リスクは負う必要があります。そのリスクテイクが健全なモノかどうかを図る手段として、理念から戦略への落し込みがあると考えてください。
家造りで言えば、まずコンセプトを決めてデザイン・素材・間取り・性能・工期などを決めますね。施主の言う事を何でも聞いて設計してみたら統一感のないヘンテコな間取りになったとか、途方もなく高額になったとか、格好の悪い外観になったという事になり兼ねません。
つまり情報を仕入れる前に、まず経営理念をもとにした自社の設計図を描いておく必要があるのです。
経営戦略の設計図を描く
経営戦略は(1)設計➡(2)実行➡(3)評価という形で定期的に更新されるものですが、(1)設計段階においては、時間軸・事業領域・エリアなどで考えます。
簡単に言えば『どこで、どのような土俵で(WHERE)・なぜ(WHY)・何を価値として(WHAT)・誰に(WHO)・どのように(HOW)考えているか』を考え、まとめていく作業です。
前提として、まずフレームワーク分析(3C[前回参照]、4P[Product、Price、Place、Promotionの4領域で分析する]、SWOT[下図]・VC[下図]など)を用いて外部環境・内部環境を客観的に分析したうえで、自社の理念に適った形の設計図を描いていきます。
具体的な内容では、自社の『土俵=施工エリア』の将来人口予測、住宅着工棟数の推移などを分析し、競合状況やその特性などをみていきます。
社内においては自社の強み・オリジナリティやもっているリソースの特性などをできるだけ客観的に分析すると良いでしょう。またここで意外と盲点になりがちですが、分析においては『色眼鏡』で見ない事が大切なポイントです。
自社の価値が顧客の価値に響いているか(そこまで強みでもないものを強みだと間違うなど)、競合相手を過小(過大)評価するなどが出てしまうといったことです。そうして設計段階で歪が生じれば、戦略が大きく違ってくる可能性が出てしまいます。
実行について
分析を行うと、時間軸(いつまでに何処に行くか)・事業領域(新築のみから他の事業への展開)・エリアの選定(拡大もしくは限定)・ポジショニングなどの結論が導き出されます。
実際にはもっと詳しく、特定エリアでの多角化(リフォーム・不動産・インテリア業界への進出)やバリューチェーンの見直し(共同仕入・業務提携・外注化など)を複合的に選択し実行する事になります。
ただし実行段階では、当然すべてが変化していきます。環境はもちろん、社内リソースも変わっていきます。誰がやるか、いくら投資するのかなども含め、『走りながら考えて、都度修正・共有して進む』という事になるでしょう。
その際に道標(判断軸)となるのが経営理念です。経営理念が浸透すると、ブレない戦略実行が可能になります。
【POINT】➡時間・領域・エリアなどの軸から自社の設計図を描く
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