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日々の暮らしの中心ともいえる食をつかさどる「台所」とは、どういう場所で、その空間づくりはどのような考えのもとに設計されるのでしょうか。また、住まい手にとってどのような場所であるべきなのでしょうか。いまや食事をつくるだけではなく、家族や仲間が集まる多目的なスペースとして変化を遂げてきた台所という場所づくりについて、「まちに暮らしの音や光があふれ出すような住宅」を心がけた設計をする川島千晶さん(設計室ちあき)にお話をうかがいました。
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動作と使いやすさを最優先
家の中でも家族で共有できる創造的な場所だと思います。料理を担う人も限定されなくなりました。楽しみとして立つこともありますし、つくる料理も様々ではないでしょうか。そんな台所づくりは、使う人の動きと流れを想像することから始まります。
ポイントは
・広すぎず、無駄がないこと。
・必要なものが必要な高さ、場所にあること。
・2人以上が立ったときに互いの動作の邪魔をしないこと。
部分の便利さを考えすぎると、かえって「便利は不便」になってしまいます。便利であることと使いやすいことは必ずしも一緒ではないんですね。火と水の場、収納する場、作業する場から食べる場へ、人と物がリズムよく行き来できると使いやすいと思います。
使う人の知恵で育てる
家づくりすべてに通じることですが、「誰にでも便利そう」ではなく、その家族に似合う簡素な空間をつくりたいと思っています。過不足ない、過保護でない始まりを用意したいですね。必ずしも質素ではないですし、ある意味ぜいたくなことかもしれません。使う人に合わせながら、生活の変化にも寄り添えるように、という思いもあります。その家で暮らす長い時の間に、家族も世の中も変わってゆくことがありますから。
設備機器の最新の情報はあまり追いかけません。建主さんの方がよくご存じなので教えていただけます。私の役割は、なぜそれを必要とされているかをうかがって、そのためによりよい方法を考えることだと思っています。お金をかけずに知恵で解決できることはたくさんありますし、そのうえでつくる側も使う側も上手に設備や道具の力を借りたいものです。どんどん使って、使う人の知恵や工夫でその家族らしい台所に育てていってほしいですね。
暮らしと向き合う
長い時間を過ごす居場所でもあります。窓から見える景色、食卓を囲む家族の様子、台所からの風景も欠かせない要素のひとつです。動きのつながり、光、空気の流れ、ひとつひとつが居心地の良さを生み出して、日々の糧につながってゆきます。家族の暮らしをつくり出す場所ですね。
動いて汚して毎日長い時を過ごす場所です。特別な気取った発想ではなく、日々の暮らしと丁寧に向き合う、家族を思う場所として大切に考えていきたいです。
Iさんの家(東京都杉並区)
Iさんのリクエスト
・パントリー(食品庫)を大きくとってほしい。
・ザルなどの乾きにくいものや毎日使う道具は収納しなくていいように。
・2階リビングでもできるだけ荷物を運ぶ距離を短くしたい。
・食洗機とオーブンを設置したい。
住宅街に建てるため「小さくても暮らしやすい家を」とフリーハンド:小井田設計室に設計を依頼されたIさん。周囲を住宅で囲まれているため、主な居住スペースは2階に設けました。台所は毎日の動線をなぞらえてシンプルで使いやすく。必要なものを必要なところに、Iさんの生活動線に合わせて、暮らしながらつくられてきた台所といえます。
毎日使うものはすぐに手の届く場所に置くIさんの台所。楽なだけなく、乾きにくい鍋やザルは見せる収納にすることがでます。
階段を上がるとすぐ左が台所。買い置きしたものをそのままパントリーに収納できる動線です。シンク脇の壁の高さを1230mmと高くとってあるため、リビング側からは手元が見えず、すっきりとした印象に。
再来荘“またくるぞう(長野県軽井沢町)
Kさんのリクエスト
・一番いい場所に台所を配置してほしい。
・できるだけ自然を感じられる空間にしてほしい。
・食材を運ぶ距離を玄関から短くしてほしい。
・作業カウンターを広くとってほしい。
外の自然を存分に感じられ、かつ目線の高さに自然以外が入り込まないという環境にある軽井沢の山荘。日頃の喧騒から離れ、のんびりした時間を過ごす場所であり、大勢で楽しく集うことを考え、台所を中心とした人の動線を考えられた山荘になりました。そこに立つことが楽しくなる、作業が苦にならない視線のコントロールと、細部にわたり使いやすい工夫が盛り込まれています。
「いちばん眺めのいい場所」に台所を配置したため、ここからの眺めは外の景色と食卓を囲む家族が見渡せる特等席。
LDKが一体となり、いつも家族の気配を近くで感じられる空間。屋根に設けられた天窓から台所に光が差し込み、作業する手元も照らしてくれます。
設計/フリーハンド:小田井設計室 川島千晶さん
1974年東京都生まれ。フリーハンド:小田井設計室元所員。高校より小田井康和氏に師事。東京大学工学部建築学科、同大学院修士課程修了後、フリーハンド:小田井設計室を経て、2009年に設計室ちあきを設立。
※「主婦目線からの和モダン住宅・現代の台所という場所」は、和モダンvol.5に掲載しています
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