新建ハウジングが運営する工務店向けオンライスクールサイト「チカラボ」から、工務店の経営者や実務者に役立つ記事をお届けします。
今回は、佐藤実さんの「チカラボ版『構造塾』」ルームからの記事です。
佐藤 実
構造塾 塾長、一級建築士、構造設計一級建築士、東京大学大学院修士課程修了。木造住宅専門の構造設計・構造計算、構造計算育成コンサルティングなどを行っています。構造を基礎から学ぶ「構造塾」も主宰しており、現在構造塾塾生は全国に1500社、2000人。「日本中の木造住宅が地震で倒壊しない」ことを基本理念に構造計算の必要性を伝えています。
M’s構造設計・構造塾の佐藤実です。チカラボ版「構造塾」の第12回です。
今回からは前回/前々回の続きとして、四号建築物の「仕様規定」について解説したいと思います。
最初は基礎の仕様についてです。
仕様規定のうち、まずは8項目の仕様ルールから確認しましょう。
8項目の仕様ルールとは
(1)基礎の仕様
(2)屋根ふき材等の緊結
(3)土台と基礎の緊結
(4)柱の小径等
(5)横架材の欠込み
(6)筋かいの仕様
(7)火打材等の設置
(8)部材の品質と耐久性の確認
基礎の仕様(令第38条)
今回の解説は(1)~(2)の仕様ルールのうち基礎の仕様です。
まず木造住宅の基礎に関する仕様規定は令第38条に規定されています。
建築基準法施行令第38条(基礎)
建築物の基礎は、建築物に作用する荷重及び外力を安全に地盤に伝え、かつ、
地盤の沈下又は変形に対して構造耐力上安全なものとしなければならない。
さて上記の令38条を読み取ればわかるように、「木造住宅(四号建築物)は小規模なので基礎の構造計算を省略してよいこと」などどこにも記載ありません。
仕様規定を満たすためには、建物の荷重(固定荷重・積載荷重・積雪荷重等)や外力(地震力・風圧力等)を算出して構造耐力上安全であることを確認する必要があります。この「安全であることを確認する方法」が構造計算となります。
次に、令38条の具体的な内容が平成12年建設省告示第1347号(建築物の基礎の構造方法及び構造計算の基準を定める件)にあります。第1項には地盤調査結果より得られる地盤の長期許容応力度による基礎形状の規定があります。以下のような内容となっています。
この地盤の長期許容応力度はSWS試験結果から算出します。SWS調査結果で得られるWsw、Nswの基礎底面から2メートルまでの平均値により算出します。
地盤の長期許容応力度の算出式は平成13年国土交通省告示第1113号(地盤の許容応力度及び基礎ぐいの許容支持力を求めるための地整調査の方法並びにその結果に基づき地盤の許容応力度及び基礎ぐいの許容支持力を定める方法等を定める件)のほか、日本建築学会、NPO住宅地盤品質協会などでも算出式が提案されているため、設計者判断で利用してください。
告示式(平成13年国土交通省告示第1113号第2(3))のよくある勘違い
qa=30+0.6Nsw(基礎底部から2メートルまでの平均値、150を超える場合は150とする)
ここで自沈層の場合、重り重量のみで自沈するためハンドルを半回転させることが無くWsw=0となります。よってWsw=0を式に代入すると、
qa=30+0.6×0=30kN/m2となります。
つまり告示式では、どんな軟弱な地盤でも30kN/m2の支持力があることになっていまい、平成12年建設省告示第1347号によって基礎形状は「布基礎」で設計できることとなります。
この間違った考え方で地盤支持力を算出している建築士が多いようなので注意してください。
安全である「可能性が高い基礎」を提案するものに過ぎない
地盤の長期許容応力度により基礎形状を決める際、注意が必要なことがあります。
例えば、地盤の長期許容応力度が25kN/m2と算出されたとき、基礎形状は「べた基礎」を選択できます。できますが、告示通りべた基礎を選択したから「構造安全性を確保できた」と誤解しないでくださいということです。
これは、地盤の長期許容応力度に対して安全である可能性の高い木造住宅の基礎形状を提案しているだけであって、個別の木造住宅ごとの安全性を担保するものではありません。「べた基礎」を選択したら令第38条にある通り、荷重、外力を算出し構造計算により安全性を確認する必要があります。
次回も基礎の仕様について、解説を続けます。
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