新建ハウジングが運営する工務店向けオンライスクールサイト「チカラボ」から、工務店の経営者や実務者に役立つ記事をお届けします。
今回は、COMODO建築工房代表・飯田亮さんの「流水腐らず/飯田亮〈COMODO建築工房〉」ルームからの記事です。
設計事務所であり工務店であるCOMODO建築工房の代表をしています。「この家のおかげで今の自分がある」――建ててから30年が経過し、住まい手さんにそう言ってもらえる家を目指しています。家は暮らしを受けとめる器、住まう人を育てていく場となります。そこに余計な装飾は必要ありません。シンプルで美しく、気持ちがほっこりする居場所がいくつもある空間こそ、素の自分に戻れる場所、それが住まいという存在だと思うのです。…
皆様お疲れ様です。COMODO建築工房代表の飯田です。
前回は初回として、工務店と設計事務所の仕事のみならず二つの業態を掛け合わせながら、店舗の設計・施工からプロデュースなどにも携わる、COMODO建築工房の仕事を自己紹介として簡単に紹介しました。
地域の工務店は変化していかなければ生き残れませんし、なにより自分たちが楽しくないといけない。その手法をそれぞれが考えていく。そんなことを僭越ながらお伝えしたつもりです。
さて第2回となる今回は、弊社の建築をご覧いただきたいと思っております。地方にて、ましてやこの事業規模の工務店はごまんといらっしゃいます。その中で弊社がピリッと山椒のような存在感を得られている理由が、この建築作品をご覧いただくとその理由が垣間見えるかもしれません。設計事務所の設計力と工務店の技術力を併せ持った弊社だからこそなしえる、建築テイストであると自負しております。
それでは前回に続き自己紹介がてら、作品をご覧いただけますと幸いです。
出世作「くの字の平屋」
私が世に出始めるきっかけとなった作品と言えるかもしれません。母の家ということもあり、設計に関しては思う存分やらせていただいたことが功を奏したように思います。今でもこの家は私の代表作として、住まい手さんからも人気を博しております。
老夫婦が静かに過ごす、ゆったり、おおらかな空間
定年を間近に迎える老夫婦のための小さな平屋です。土地は特長のない正方形のため建物を「くの字」に曲げ土地との対話を計りました。客間は備えず、あくまで二人が快適に暮らすためと割り切ったことで、動線は無駄がなく、住み心地はとても良好のようです。また、老後生活を前提に設計を施し、ゆっくりと時が流れるような、おおらかな住空間が実現できたと自負しております。「日本建築」を強く意識しつつも、COMODO建築工房のテイストを織り交ぜた作品となりました。
建築データ
建築地:栃木県真岡市
構造:木造平屋建て
施工期間:2010.06~2011.02
敷地面積:275.00m2(83.0坪)
延床面積:66.54m2(20.1坪)
家族構成:老夫婦
作風確立「VermeerRay」
上記の作品をベースとし、暗中模索から脱したと言える作品です。巷では大開口が主流ではあるけれど、あえて開口を絞り、住まいとしての居心地の良さを私なりに解釈したことが、「弊社はこの路線で行く(行ける)」と背中を押してくれたのでした。
陰を生み出すための開口
この「VermeerRay」の由来は、ご存じの方がほとんどであろう画家のフェルメールから。あの絵画のような、柔らかい光をもたらす内部空間を目指した住まいです。窓から差し込んだ光が、漆喰の壁に反射し、対象を柔らかく照らす……決して明るくはないけれど、独特な空気感がこの家にはあります。
建築データ
建築地:栃木県那須烏山市
構造:木造平屋建て
施工期間:2013.12~2014.08
敷地面積:561.26m2(169.5坪)
延床面積:114.27m2(34.5坪)
家族構成:夫婦
挑戦作「斜45度の家」
作風としてはブレず、より成熟する方向へと。整然とした分譲地に逆らうように、建物の配置を敷地に対し45度振った「斜45度の家」。それにより四角の土地には4箇所のスペースが生まれ、それぞれに趣の違う作庭を誂えました。正面の揃った住宅街には大きな変化が表れ、足並みを揃える無意味さを知ります。
がむ斜ら扇垂木
アイランドキッチンを中心とした、開放的でありながらも内包される2Fリビング。その天井は住宅にはほとんど用いられることのない技法である「扇垂木」を採用。木組みのダイナミズムが圧巻となりますが、決して空間性を犠牲にすることなく、必然的な存在として空間を嫌味なく構成してくれています。
建築データ
建築地:栃木県宇都宮市
構造:木造2階建て
施工期間:2016.05~2016.11
敷地面積:222.28m2(67.23坪)
延床面積:102.67m2(31.0坪)
家族構成:夫婦+子2人
新規事業展開作「親子屋根の家」
店舗プロデュースを試みる貴重な機会をいただいた1作目となります。店舗はもちろんのこと、ロゴや包装まで手掛けました。
COMODOが作る和菓子屋さん
今作は和菓子屋さんとの店舗併用住宅となります。店舗と住居の動線の振り分けという課題に対し「棟を分ける」という解とし、それはまるで親(住居部)子(店舗部)のような佇まいとなりました。店舗はロゴからすべてプロデュース。住居は子3人の5人家族に21坪という居住面積は決して広くはないけれど、家族の距離感を楽しめる住まいとなりました。
建築データ
建築地:栃木県佐野市
構造:木造2階建て+店舗
施工期間:2017.01~2017.06
敷地面積:283.85m2(85.86坪)
延床面積:126.06m2(38.13坪)
家族構成:夫婦+子3人
最新作「集いのいえ」
去年の2月に竣工した近作です。今でもヴォリュームは小さく、ブレのない作風を感じていただけると思います。
人が自然と集ういえ
江戸時代から続く日光杉並木の景観に敬意を払いつつ、以前からそこに建っていたかのような、しれっとその場に佇むプロポーションが特徴です。20坪以下のコンパクトな空間に必要最小限で十分な住まう機能を備え、緑豊かに余生をお過ごし頂くための住まいとなりました。
YouTubeにてCOMODOチャンネルを開設しておりますので、合わせてご覧いただけますと幸いです。
建築データ
建築地:栃木県日光市
構造:木造平屋建て
施工期間:2019.08~2020.02
敷地面積:312.36m2(94.38坪)
延床面積:85.29m2(25.7坪)
家族構成:母+時々親戚
いかがでしたでしょうか。その他の作品は弊社のHPにも公開しておりますので、お時間ございましたらそちらも併せてご覧くださいませ。
次回以降は、これらの建築が生み出されていく背景を紹介していこうと思いますので、次回もまたよろしくお願いいたします。
次の記事:
→[第3回] 私の住宅設計作法 (設計の上達について)
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