新建ハウジングが運営する工務店向けオンライスクールサイト「チカラボ」から、工務店の経営者や実務者に役立つ記事をお届けします。
今回は、坂東秀昭さんの「工務店が地域でビジネスを創る」ルームからの記事です。
株式会社家印(やじるし)の坂東秀昭と申します。今回からチカラボにて連載をさせて頂くことになりました。
少しでも工務店経営者の方にとってヒントとなればよいと思います。よろしくお願いします。
さて早速ですが、自己紹介の前に、少し皆さんの興味を引くお話をさせて頂きたいと思います。
私が代表を務める家印は、富山県・朝日町というところにて展開する工務店および設計事務所です。社員も5人と、非常に小規模です。
でもそんな私どもの会社が少し前から注目されています。
大手のメディアから取材を受けたり、行政からの視察などの依頼が相次いだり(残念ながらお断りすることもあります)、私自身も地元の富山大学で講義をさせてもらうなど、非常に忙しくさせて頂いているのです。
もちろん私たちには、プロモーションが上手なわけでもメディア活用に長けたPRやマーケティング担当がいるわけではありません。
それはなぜでしょうか。
家印のある朝日町とは
ヒントは、私どもの会社の場所=朝日町という場所にあります。
富山県の中でもイメージの難しい、海沿いかつ新潟県との県境に位置する朝日町は、実は皆さんにもきっと聞き覚えのある「消滅可能性都市」とされたくらい過疎エリアなんです。朝日町は富山県で最も高齢化・過疎化した町と言われていて、60歳以上の高齢者がおよそ半分を占めています。
人口は約11000人。人口はどんどん流出していて、空き家も多い。
つまり普通の工務店の仕事がたくさん来るようなエリアではないんです。
ですが家印が注目されている理由もそこにあります。
日本の縮図
この朝日町の状況って、日本の縮図にすごく似ているんです。
日本の場合は、東京などの大都市に向かって若者が移住していきますが、富山県の場合も富山市に向かって若者が移住していく。
富山県のはじっこにある朝日町から、真ん中の富山市に人が集まっていく。
もともと他の地域との交流が多くない朝日町からは、どんどん流出しています。
出生者と亡くなった方のデータを照らし合わせても、毎年200人以上の方が減っていっています。
人口比率でいうとマイナス2%ほども減少していました。
そんななかで工務店と設計事務所としてできることは何か。
それをおのずと考えることになりました。
工務店としてできること
そこで注目したのは空き家です。
朝日町では(少子高齢化の)人口減少により、年間40軒ずつ空き家が増えていました。
このままいけば町が廃墟だらけになって、町民の一番の悩みの種になると思ったんです。
廃墟が増えると街並みが寂しくなるだけではなくて、治安の悪化はもちろん、湿気の多い富山では住めなくなってしまうまでの期間も短い。
どうしたら私たちがこれを減らせるだろうか?と悩んだ末に、
「だったら私たちで空き家を有効活用できる町にしよう!」そう決意しました。
そのためにまずは仕組みをつくり、成功事例を増やしていくことを目標に掲げました。
課題と「最初の空き家活用」
ところがこの町には不動産会社が一社もなかったんです。
空き家の管理をまったく把握できていない状況でした。
当然、空き家を貸すという文化すらありませんでした。なんなら「空き家を貸すと貧乏していると見られるから嫌だ」という感じさえあったんです。
そこで、まずは自分たちから動いて、空き家を活用した拠点を作ることが必要だと感じ、そこから始めました。
ここは自社の真向かいにある元食料品店だった空き家なんですが、地域の方たちに手伝ってもらいながら手作りで改修し、まずは自分たちの事務所を空き家を使ったものへのリニューアルしました。
これが家印が注目される、最初の一歩となります。
次回に続きます。
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