鋼板の大敵は塩害
ここからは、ガルバリウム鋼板(亜鉛−55%アルミ合金めっき)を中心に実際の耐久性について見ていく。ガルバリウム鋼板は耐久性が高く、一般的な住宅地においては屋根・外壁ともに30年以上の耐久性を有した事例もある。だが敷地条件や設計・施工によっては早期に腐食が生じるケースもある。特に影響が大きいのは雨掛かりだ。
木板張りや左官仕上げの外壁の場合、耐久性を確保するには雨に当てないのが基本となる。だが鋼板は逆である。軒や庇の直下など雨掛かりしにくい場所は塩分や酸性分などの腐食原因物質が洗い流されずに濃縮し、腐食の進行が早くなる。無塗装の素板には特にその傾向があり、白いまだらのような白錆や黒ずんだシミのような錆が生じる場合がある。これらは安定した錆なので、ここから赤錆に変化するわけではないが美観は損なわれる。
塗装鋼板の場合、こうした錆は発生しにくいが、同様に雨が当たらないことで腐食のリスクは高まる。定期的に外壁を水洗いして腐食の原因となる物質を洗い流すことが望ましい。なお水洗いの際には壁体内への漏水に注意し、高圧洗浄などは避ける。
雨掛かりの有無や洗浄の影響が如実に現れるのが海沿いの地域だ。海沿いの地域で使用する場合には海塩粒子が外壁に付着し、腐食のリスクが大幅に高まる。
海塩粒子は以下のように付着する。(1)波しぶき(液滴)の発生→(2)風による液滴の飛散→(3)飛散中水分の蒸発による過飽和液滴の生成→(4)建物への付着→(5)付着部から海塩成分が析出(海塩粒子)。
海から飛んでくる海塩粒子の量は距離で決まる。海岸から数百メートルまでは塩分量が多く、約250メートル以内は塩害による腐食が多発する。ガルバリウム鋼板の場合、海岸からの距離が約250メートル以内の腐食速度は大きく、数百メートルを超えると腐食速度は小さくなるという試験結果もある。
海沿いの住宅を手掛ける機会が多く、ガルバリウム鋼板を外壁と屋根に多用する菅沼建築設計の菅沼悟朗さんはこう話す。「20年以上の長期性能を考えると、海岸から500メートル以内の外装にガルバリウム鋼板を用いるのは躊躇する。弊社の場合、この場合の第一選択肢は木板張りとなる」。
実際には距離のほか方位や風向きなどに左右される。基本的には海側に向いた面が影響を受けやすいが、風を受ける面も空中に舞っている海塩粒子が外壁に付きやすいため、想定外の面の腐食が進んでいることもある。また風向きは常に一定ではないため、複数の方向の風を受けやすいコーナー部で腐食が進む場合もある。
また曲げ加工を施した部分や切断面、傘釘などの接合部は、一般的な環境よりもさらに錆が発生しやすく、劣化が進みやすい。
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