タイコーアーキテクト(大阪府東大阪市、羽柴仁九郎社長)の 家づくりのテーマは「強くて暖かくて、ちょっとかっこいい家」。
エヌ・シー・エヌ(東京都港区、田鎖郁男社長)の耐震構法「SE構法」とパッシブデザインによる注文住宅、建売分譲をそれぞれ 20棟手掛けている。自由度の高い構造躯体を活かし、独自性の高いパッシブデザインを実現させる同社社長の羽柴さんに、その建築思想や背景を伺った。
パッシブデザインとの出会いが分岐点
同社社長の羽柴さんがパッシブデザインに取り組み始めたのが2009年だった。重量木骨グループによるパッシブデザイン講座で“師”と仰ぐ野池政宏さん(住まいと環境社代表、大阪府池田市)に出会ったのがきっかけだ。「それまでデザインありきの設計だった。野池さんと出会いが分岐点になったのは間違いない」(羽柴さん)。
当時、野池さんが「断熱性能は冬の暖かさに関係あるがそれは全てではない。当然太陽の暖かい光を取り込めたら快適で省エネな家になり、全て設計段階で事前に計算でわかる。それがパッシブデザインだ。これは住まいと暮らしの文化でもある。今後日本の家づくりで絶対に必要になる」と話したといい、羽柴さんは「それが衝撃だった」と振り返る。
野池さんに出会い、そして学んでいくことで「パッシブデザインの醍醐味である、自然の恩恵と小さいエネルギーで冬は暖かく、夏は涼しく、自然光で明るい設計手法とその暮らしの提案に惹かれた。自分の目指すべき道はこれだと確信した」と話す。
3つの哲学からなる建築
同社は全棟SE構法を採用、長期優良住宅、全棟パッシブデザインでZEH基準を標準化している。全棟気密測定を実施し、C値は0.6cm2/m2が基準。引渡し後には室内温度を測定し、設計時のシミュレーションと実測値とを比較。設計力と施工品質の向上に努めている。大阪でSE構法の実績棟数は1位だ。同構法を採用する国内500社以上の事業者の中から、設計・施工の高い品質や技術、性能などに加え、第三者機関による審査で選出された60社が所属する「重量木骨プレミアムパートナー」に選出されている。
羽柴さんには、建築する上での「3つの哲学」が存在するという。1つ目は、もちろん「パッシブデザイン」。大阪は土地柄、建築予定地の周辺に住宅やビルが建ち並ぶエリアが多い。太陽の光と風を取り込むには、特に立体的な設計を工夫する必要がある。南面に大開口を設けるための構造躯体で設計しながら、あらゆる条件に対応するため「オートクチュール設計」を行っていくという。
2つ目は「ロングライフ」。羽柴さんは「強くしなやかであること。施工品質や保証体制、メンテナンス性に優れた三位一体の住まいを提供する」と説明する。「許容応力度計算された耐震等級3基準を満たしたSE構法で建築することで、引き渡しから10年、最長20年までの構造性能を保証する」(羽柴さん)。
3つ目は、顧客のライフスタイルに寄り添った暮らしをソフト面から提案する「フィット」。たとえばシンプル、ハイ、カジュアル、ラグジュアリー、北欧と5つのモダンデザインから提案をしていく。そのほか、外構や植栽計画の提案まで行っていくという。
鉄骨のように自由度の高いSE構法
羽柴さんは「SE構法とパッシブデザインは相性が抜群で切り離すことはできない」と認識を示す。「1995年の阪神淡路大震災の後に加盟したが、パッシブデザインに取り組み始めたことで、改めてSE構法と出会ったと認識している」と振り返る。「鉄骨のように自由度の高い設計が可能で、UA値やQ値、C値だけでは実現できない本当に暖かい家が可能だ。強靭でしなやかな設計でありながら、構造とパッシブデザインの両方を追求することができるのはSE構法だけだろう」と語った。
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