「性能やデザイン、価格面で大手ハウスメーカーや大規模ビルダーに遜色ない家づくりが出来ているのに、競合するとなぜか受注の機会を逃してしまう」といった経験をした工務店は少なくないだろう。大手住宅メーカーが標準で長期保証(保証期間60年)を採用しているのに、地場の工務店の多くが「10年保証」に甘んじている現状から「住宅ローンが最長 35年なのに、住宅の構造・防水の保証期間は10年のままで良いのか」という疑問の声が業界内部からも指摘されている。
工務店の長期保証をバックアップする保証システムを全国でいち早く商品化した一般社団法人MEAS(ミース、東京都中央区)の田中俊行代表理事は、「長期保証をすることによって、工務店が自信をもって会社を売り込む姿勢に転換して欲しい。工務店が安定して事業を継続することが地域への貢献につながる」と話してくれた。
―― 最近では大手ハウスメーカーをはじめ、規模の大きいビルダーが長期保証を行うことが一般的になっているようですが、工務店の現状はいかがですか。
大手ハウスメーカーや大規模ビルダーは、地場工務店との差別化や、今後の住宅着工戸数の減少傾向を見越した顧客の囲い込みの狙いもあって、保証期間を最長60年とする長期保証がスタンダードになっています。一方で、地場工務店は瑕疵担保責任の「10年」を保証期間としているところが多いのが現状です。
―― 住まい手の長期保証に対するニーズはあるのでしょうか。
保証やアフターに対する顧客のニーズは高まっており、それに応える形で20年やそれ以上の長期保証を導入する地場工務店は増えています。大手が狙う価格帯が下がってきていますし、大手の営業担当者が、地場工務店の保証が短い理由を、企業規模だけでなく、品質やアフターサービスの不安に結びつける営業トークで差別化を行っていることに対して、危機感を覚えている経営者は少なくありません。
地場工務店は地域に根ざす事業モデル
―― MEASが地場工務店の長期保証のバックアップを事業化した背景を教えてください。
弊社が、工務店の最長60年保証を支える「スマイノミライ」を開発した最初のきっかけは「10年保証を続けていくことへの危機感」を抱く工務店の皆さまからの要請です。開発を進めるにつれて、住宅業界における建てる側と住まう側の双方が抱えるさまざまな問題が明らかになり、長期保証はその問題解決になると確信できたことが事業化の大きな要因となりました。要請から2年かけて商品開発を行い、さらに3年後の2018年には、保証会社としての安全性をより高めるために再保険という弊社のリスクに対するバックアップの体制も整えることができました。
―― MEASが地場工務店の「長期保証導入」の支援に力を入れるのには、何かねらいがあるのですか。
お客さまは、住宅会社を選ぶ際の決定要因として「長いお付き合い」や「長期保証」を上位に選んでおり、もう建てるだけで終われる時代ではありません。地場工務店の事業モデルは地域に根差すことそのものですから、そこから逃げられないことは弱みではなく大きな強みです。一方で大手はその地域に市場がなくなれば撤退する事業モデルですから、市場が縮小したときに優良な地場工務店が失われていては地域の衰退に直結します。
「将来にわたって地場工務店の皆さまに安定して経営を続けていただくこと」は、地域の皆さまの暮らしの安心につながる地域貢献であり、それが地場工務店の「お客さまの安心のために」という想いを形にする最長60年保証を普及し、支えたいと考える私たちの願いでもあります。
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