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今回は、佐野郁夫さんの「現場監督論 -現場監督以外も知っておくべき、現場監督の仕事-」ルームからの記事です。
佐野 郁夫
木質パネル工法の住宅メーカーに入社後、研究所、開発部門にて住宅の性能、構造や大臣認定取得に関わる業務に従事。その後、日菱企画株式会社/住宅産業塾にて事務局長として住宅産業塾を運営。その他、魅せる現場づくり基礎講座、魅せる現場コンテスト、現場診断・指導、業務改善指導のほか、日菱企画グループのコンサルティング全般をまとめている。
住宅産業塾の佐野です。今回からチカラボにて、「現場監督」の仕事についてお伝えしていきたいと思います。ひとことで「現場監督の仕事」といっても、細部にわたって答えられる方は多くないのではないでしょうか? あらためて現場監督の仕事をイチから解説していきたいと思います。ぜひ監督以外の職務の方、営業や設計も、監督が何を管理しているのかをしっかり知ることで、良好な社員間のコミュニケーションにつながり、チームとしての仕事がしやすくなると思いますので、ぜひご一読ください。
現場監督の目的とは?
さて今年はコロナ禍で一時的に受注が落ち込みましたが、最近は受注が好調なところが多いようです。そうなると、これからは特に現場監督の仕事が忙しくなってくると思われます。
しかし現場監督は忙しくなろうが、お客様の要望する住宅を1棟1棟、満足いただける形で引き渡すことが現場監督の最大の責務です。それには「“図面通り”に完成させるために現場を管理すること」がとても大切なことになります。
もうひとつの重要な責務は、「計画した利益を、計画通りの現場で実現すること」です。まずはこの2点が理解できているでしょうか?
現場監督の職務とは、現場に関わる大工・職人・協力業者ら大勢の”プロ”を統率してお客様の大事な住宅をつくり上げることです。よって、その責任の重大さを自覚する必要があると言えます。品質のよい住宅づくりを実現するにも、確実に利益を上げるのも現場監督の仕事ぶり次第です。そしてお客様に喜ばれれば何よりもうれしいものです。だからこそ、現場監督の仕事は、本来はやりがいのある仕事なのです。
しかし大工・職人の能力、技能、技術力はさまざまです。経験豊富で技能も技術力もともに優れた熟練者もいれば、若くて行動力はあるものの、経験を必要とする技能が十分に伴わない方もいます。しかし建築を依頼したお客様にとって、現場を手掛ける大工・職人の違いで品質が変わってきてもいいのでしょうか?
そこで、様々な技術レベルの大工・職人が手掛けるすべての住宅が、同じ品質を保つように、①施工方法・手順を統一する、②施工の納まり詳細を決める、 ③品質基準を設ける、そしてそれらのルールを守りきる品質管理体制を確立しなければなりません。これを確実に行うため、施工の標準化・システム化が重要になってくるのです。
現場監督の9つの管理とは?
では、実際に現場監督の仕事はどのようなことがあるでしょうか? 会社の規模、業務のやり方などにより違いがありますが、現場での仕事には9つの管理があります。それらは以下の9項目です。
・工程管理
・品質管理
・原価管理
・資材管理
・労務管理
・安全衛生管理
・廃棄物管理
・手続き管理
この8つの現場管理にお客様対応(顧客管理)を加えた9つの項目、これを現場監督の「9大管理」といいます。
しっかりとした「良品質住宅」を実現するためは、この9大管理は必要条件です。ほとんどの住宅会社では、何らかの形でこの9大管理を行っているはずです。しかし、実際にはミス・ロス・ムダが発生し、利益を逸失し、クレームが発生し……、といったことが現実では起こっていると思います。
それは何故でしょうか?
監督の「仕事の覚え方」を変えなければいけない
それは、現場監督の管理(業務)の内容が明確になっていないからです。
上記の9大管理のように、現場監督の役割は多岐にわたり、売上と信頼に直結する重要な責務を託されています。にもかかわらず、監督が業務のどの部分を管理しているのか、会社全体できちんと把握されているケースは稀でしょう。監督自身でさえ、時には経営者ですら、把握していないこともあります。
もちろんその他、図面が完成していない、引継ぎが不明確といったこともあるでしょう。要するに「業務の標準化」とその実行ができていないことに尽きます。
現場監督の仕事は、先輩のやり方を見ながら覚えるとか、職人に教わって覚えたとか、比較的我流になるケースがありました。しかしこれでは若い人、新しい人材も育ちません。
本来は、監督業務としてしっかりとしたやり方を決め、ルールを決めて行うことが必要なのです。また、ツールを使うにも業務の標準化をしていないとツールありきになり、しばらくすると使わなくなるといった現象も多々あるようです。業務の標準化はとても重要なことなのです。
現場監督は、クレームや利益損失などの責任を問われるのと同時に、しっかりとした住宅をつくり上げて当たり前という風潮があります。これでは若手が、やりがいやモチベーションを保てずに辞めてしまうというケースもあると思います。それでいて標準化など、教育の体制は整っていない。これでは可哀そうですよね。このようなことにならないためにも、今のうちに現場監督の仕事について、改めてよく考えてみましょう。
次回からは、9大管理などの現場監督の仕事の中身についての解説を中心に、業務の標準化をどう進めるか、「魅せる」現場づくりや安全体制づくりのことなどについても説明していきます。
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