パッシブハウスがビルダー、工務店を救う
スマートハウスを推し進める大資本装置集約産業連合に工務店やビルダーはどう対応していけばいいのか。
私は「パッシブデザイン」がその切り口になると考える。
パッシブデザイン住宅とは「敷地条件、気象データ、建物の性能(気密+断熱)を細部まで考慮して冷暖房負荷を正確に求め、日射や風の流れを利用できる窓位置にすることで、住宅設備をミニマム(極小値)にした、居住性の高い省エネ住宅」のことである。
なぜ、パッシブが中小の住宅会社を救うのか。 以下にポイントを挙げたい。
1 [図]のように、スマートハウスが左脳的な文明志向住宅であるのに対して「パッシブ」は右脳的文化志向住宅である。従って、住宅設備や装置に集約した家づくりでなく、設計思想や暮らし方の提案というソフト面での差別化が可能であり、装置の価格競争にさらされることが少ない
2 文明志向の左脳型顧客よりも、文化志向の右脳型顧客の方が良質な顧客が多い
3 「パッシブデザイン」の定義は非常に多様で幅が広い。従って様々なパッシブ住宅を作ることができ、各企業のオリジナリティーが発揮しやすい
4 スマートハウスの収益構造が装置や設備販売にあるのに対して、パッシブ住宅は設計の工夫や外構、遮光、暮らし方、地域の風土などを反映したコンサルティングに重点があるため、中小企業に適した収益構造を構築できる
まとめ
東日本大震災をきっかけとして、消費者意識は一気に省 エネや自然エネルギーに向かっている。この大きなトレンドのうねりを、住宅産業がどのような受け皿で受け止めるのかがここ数年の大きなテーマである。
これまで、ほとんど省エネや自然エネルギーに関心を持たなかった多くの一般消費者(最も大きいボリューム層)が、環境やリスク対応という大きな風に乗って、スマートハウス的左脳市場に流れ込めば大手企業連合に対して有利となり、パッシブハウスの方に向かえば中小住宅会社にも勝機が生まれる。
その意味では、これまでパッシブ住宅に取り組んできた一部の住宅企業は、パッシブ原理主義(自分たちの考えだけが絶対と考える人々)の罠に陥ることなく、「パッシブという価値を認めてもらう」ために協調し、パッシブデザインへのトレンドを形成していく努力こそが、自分たちが生き残る唯一の方法であることを肝に命じるべきである。
原理主義は破壊しか生まず、決して創造にはつながらない。そのことは歴史が証明しているはずだ。
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