新建ハウジング連載でおなじみの鵜澤泰功さん(MSJグループ代表)が立ち上げた住宅シンクタンク「住宅アカデメイア」が発行する「未来通信」の内容を抜粋して、Web連載のかたちでお届けします。今回はハウスメーカーを中心にトレンドとなっている「スマートハウス」と、地域のつくり手と相性のいい「パッシブデザイン」について。
スマートハウス推進の意味
「スマートハウスに非ざれば住宅に非ず」。最近の住宅メーカーや住設メーカーの広告表現を見ていると、このようにでも言いたいと思えるほど、スマートハウス一色である。
スマートハウスは大手設備メーカーやハウスメーカー、EV(電気自動車)を推進している自動車メーカーには極めて好都合な技術的、マーケティング的な切り口と言える。
スマートハウスによって、住宅は大資本型装置産業(まるで自動車産業やロボット産業の様な産業構造)となり、大手連合による寡占化市場を生み出すことが可能であるとの考え方だ。
事実、スマートハウスの推進を共通テーマとして、積水ハウスと日産自動車、住生活グループとシャープ、積水化学とNEC、ヤマダ電機とエス・バイ・エル・・・と数えればきりがないほど大手住宅企業とスマートハウス技術周辺の大企業との提携や買収による合従連衡が一気に進んでいる。
では、スマートハウスなるものを消費者は受け入れるだろうか。
私の回答は否である。
上記のように、世界的規模での信用収縮と雇用不安、所得低下という状況にあって、太陽光パネルに蓄電池、スマートメーター・・・といった高額設備を一般の住宅ユーザーが受け入れるとは到底思えない。
だがこのことはスマートハウスを推進するハウスメーカーも百も承知であり、「スマートハウスでは、快適な生活を我慢せず無理なく省エネができます。これからはスマートハウス以外、もはや家ではありません」と声高に言いながら、落としどころは「家電集約住宅」への追い込みであろう。
「家電集約住宅」とは空調設備やLED照明、小さな蓄電池、その他省エネ家電程度のものをすべてセットした住宅である。
つまり住宅だけでは高めにくい付加価値を、このような設備をスマートハウスの名のもとにセット販売していく販売手法である。恐らく消費者はスマートハウスに大きく訴求され、しかしとても買える値段ではないと知ると、結果としてメーカーの進める「家電集約住宅」を購入するというシナリオなのだろう。
鵜澤泰功(うざわ・やすのり) MSJグループ代表
住宅産業研究所でハウスメーカーを中心としたマーケティングコンサルティングに従事した後、1996年に住宅商品開発や経営戦略、住宅金融に関するコンサルティングや住宅関連のシステム開発コンサル等を主業務とする㈱ビルダーズシステム研究所を設立。さらに、2000年に住宅性能評価機関㈱ハウスジーメンを、翌2001年に住宅関連保証会社㈱日本レジデンシャルファンドを設立し、各社の代表取締役に就任。さらに2005年に日本モーゲージサービス㈱を設立して代表取締役に就任した。2011年5月に住宅業界のビジネスプラットフォーム/シンクタンク「アカデメイア」を開設。
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