新型コロナウイルス感染症の新規感染者が著しく増加しています。
感染拡大→緊急事態宣言の再発動という事態となりますと、通常の請負契約約款の範囲を超える対応をしなければならない事態(感染回避のためにやむを得ず工期変更をするケースや工事の一時中止など)が生じます。
4月の緊急事態宣言発令下において、工事を一時中断する決定をするか否か、という検討を実施するに際しても、「当社から工事中止を提案すると、後に、損害賠償請求を受けてしまうのではないか?」という不安から法律相談が寄せられたものもありました。
また、微熱の社員を休ませたり、大工の出社日数を減らしたりしたことによる業務効率低下に基づく工期の遅延や、職人の家族や濃厚接触者が新型コロナに感染したことが判明したため自宅待機を余儀なくされ、当該建築現場での作業ができなくなったことに基づく工期遅延、3密防止のための作業人員の削減・離隔措置に基づく工期遅延について、遅延損害金が発生しないようにする特約も必要となります。
新型インフルエンザ等対策特別措置法第4条1項は、「事業者及び国民は、新型インフルエンザ等の予防に努めるとともに、新型インフルエンザ等対策に協力するよう努めなければならない」と規定しており、感染症拡大防止措置は、努力義務にすぎません。
従って、特措法の要請に応じることは、「不可抗力」とは言い切れないのです。
不可抗力の例としては、地震や洪水等の天災、戦争、騒乱等が挙げられます。その判断基準は、外部から生じた原因でありかつ防止のために相当の注意をなしても防止し得ない事態であると解されており、不可抗力に該当するという判断は、法律的には簡単ではないのです。
ですから、事後の判例で「不可抗力にはあたらない」という判断が裁判所からなされるリスクもゼロではないため、しっかりと契約上の特約条項を取り交わし、後々の法的リスクを避けることが重要となります。
下記に、皆さまが今使っている請負契約書に添付していただきたい新型コロナ対応の特約条項をアップします。参考にしていただけますと幸いです。
匠総合法律事務所代表社員弁護士として、住宅・建築・土木・設計・不動産に関する紛争処理に多く関与。2018年度より慶應義塾大学法学部教員に就任(担当科目:法学演習(民法))。管理建築士講習テキストの建築士法・その他関係法令に関する科目等の執筆をするなど、多くの執筆・著書を手掛ける。一般社団法人日本建築士事務所協会連合会理事・法律顧問弁護士。一般社団法人住宅生産団体連合会消費者制度部会コンサルタント。
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