山梨県甲府市の(株)てづかは昨年、アエラホームのフランチャイズ(FC)に加盟し「アエラホーム甲府西店」として再スタートを切った。
自然素材と大工技術を強みに何十年もやってきた同社がなぜFCへの加盟を選んだのか。同社社長の手塚康次さんと、設計の望月由香里さんに話を聞いた。
自然素材の家が選ばれなくなった
1968年に創業、1996年に会社設立したてづかは、自然素材を使った手刻みによる丁寧な在来木造住宅、社寺建築を得意としてきた。営業スタッフを置かず、チラシもつくらず、ほぼ紹介だけで年3~5棟の受注が舞い込んだ。
だが、変化が訪れる。「以前は地元だけでなく市外・県外からも依頼が来たのに、自然素材の家が目新しいものじゃなくなり、どうしてもうちで建てたいというお客様が年々減ってきた」と社長の手塚康次さんは振り返る。「自然素材での差別化が難しくなったことに加え、断熱性能を上げたいなど、数年前からお客様の求めるものが明らかに変わってきたと感じるようになった」と設計の望月由香里さんも続ける。
2年前にはついに新築受注がゼロに。OB宅の大規模リフォームなどの仕事はあったものの、新築が取れない危機感・焦りにさいなまれたという。
「同郷の雄」がFC加盟を後押し
新築の落ち込みに悩んでいた頃、手塚さんはアエラホームの中島鷹秀社長と出会う。アエラホーム株式会社の出発点は、1963年に山梨県甲斐市で創業した「中島工務店」。県内で急成長し、2006年の東京進出以降は全国に直営店を展開。現在の拠点数は直営だけで31店にのぼる。
アエラホームの強みは何と言ってもアルミで家全体を包み込む外張W断熱工法を採用した「高気密・高断熱・高遮熱」の高性能住宅を提供する商品力だ。
そんな同社が2018年にFC展開をスタートするタイミングで、手塚さんに声がかかった。「直接の面識はなかったものの、同郷・同業の中島工務店がすごい勢いで成功していくさまを間近で見ていたこともあり、『アエラホーム甲府西店としてやってみないか?』と打診されたときには、もう心は決まっていた」と手塚さん。これまでFCへの加盟はまったく念頭になかったが、新築の不振を立て直すには自社の力だけでは、提案力やPRに限界があると感じ、時代に合った新しいことに挑戦するしかない、と考えたという。
そして同社は2019年7月、「アエラホーム甲府西店」として始動。これにともない、従来の「待ち」の営業から、「攻め」の営業へ力を入れるため、ベテランの営業スタッフ1人を創業以来、初めて採用した。
圧倒的な集客力で商談の機会が増えた
加盟して1年。この間の変化について聞いてみた。手塚さんが「おおむね満足」と評価するのが、FC本部の集客力だ。加盟店には毎月新しい資料請求顧客情報が提供されるため、商談に移行できそうな見込み客には望月さんが早い段階でプランを描き、提案のタイミングとスピードを早める工夫をするようになった。以前のような「待ち」の姿勢では、家づくりを検討している人と出会う機会が極端に限られるため、FC本部が行うWEBを中心とした広告展開と一貫したブランディング戦略による集客力、省エネ大賞やキッズデザイン賞をはじめとする第三者機関からも評価される商品力により、新鮮な顧客情報が常に得られるメリットは大きいという。
また同社の場合、すぐ近くにある直営店のモデルハウスを使えるため、固定費を抑えて営業活動ができる利点も大きい。設計の望月さんはどう感じているのか。「スーパーバイザーとのオンライン進捗会議や、新しいCADの導入など、当初は多少の抵抗があったものの、いざ取り組んでみると不都合はまったくない。1人で設計をやっていると答えがわからない問題にぶつかることが多々あるが、部位別の詳細図集などのマニュアルが整っているのでとても助かっている」と話す。
初年度は3棟契約 目標は年10棟
「まだ手探りで、営業も我流」としながらも、同社はこの1年間で3棟を契約。自然素材の家に比べると坪単価こそ下がったが、利益率・利益額が上がり、何より新築受注数が戻ったことで「手応えを感じている」と手塚さんは話す。「まだアエラホーム流の営業が身についていないので、それを徹底することが成長への近道だと考えている。当面の目標は10棟。それが達成できたら、移動型モデルハウスを建てるなど、次のステージに進みたい」。
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