事故や病気で身体に障害を負った後、介助・介護を受けながら自宅で社会復帰を目指す人にとって、住宅の機能は重要で、さまざまな生活パターンを想定した「バリアフリー住宅」が求められる。
若い時に事故で障害を負い、車いすで生活をしながら工務店を経営する阿部建設(愛知県名古屋市)社長の阿部一雄さんは「住まいがバリアフリーになることは特別なことではなく、むしろそれを標準と考えることがこれからの家づくりに必要だ」と訴える。
阿部さんは、自身の経験も踏まえながら、家づくりを通じて、障害のある人やその家族の生活に向き合ってきた。
「どうしたら介助・介護を受ける人と家族の双方にとって快適な住宅にできるか。状況が変化した時の対応はどうしたらよいか」などを意識し、本人や家族の暮らしを身近なサポーターとして支える「バリアフリーコーディネーター」の役割を果たしたいと考える。
阿部さんは「真のバリアフリー住宅・建築を実現するために、病院や介護・リハビリ施設など障害者の社会生活のサポートを担う各分野の機関、専門家、関係者からの情報を調整・統合し、それを住宅・建築に落とし込むコーディネート機能を工務店や建築士が積極的に担っていってほしい」と期待する。
「心のバリア」解消策を基本計画に反映
工務店が関係機関と連携、時代の要請に応える
障害者やその家族が快適に豊かな暮らしを送ることができる真の「バリアフリー住宅」を実現するためのカギを握るのは工務店の力量だ。阿部さんは、工務店の建築士が通常より時間をかけて、障害者本人や家族が描く暮らしのイメージを共有しながら、並行して病院やリハビリセンターなど関係機関からの情報を統合して家づくりの基本計画に落とし込む、建築士の業務を超えた「バリアフリーコーディネーター」の役割を担うことが必要だと訴える。
真のバリアフリー住宅は、加速する超高齢化社会のなかで、時代や社会の要請として、さらに強く求められるようになる。
自ら実践しながら、地域の工務店が積極的かつ主体的に「真のバリアフリー住宅」を提供していくことを期待する阿部建設(愛知県名古屋市)社長の阿部一雄さんに話を聞いた。
――どんな思いで、バリアフリー住宅を手掛けているか。
私は工務店の社長に就任する3年前、37歳で趣味のオートバイの事故が原因で脊髄を損傷し車いすの生活になった。暮らしは一変したが「この条件(立場)を住宅設計や暮らし方提案に生かす建築士がいてもいいじゃないか」と状況を受け入れ、単なる段差解消や手すりの設置ではなく、真のバリアフリー住宅を目指そうと決めた。
以来、数百件のバリアフリー工事に携わる中で、障害者や高齢者、そして介助・介護する家族と向き合ってきた。障害者の多くは「申し訳ないね」「家族に負担を掛けたくない」と自分の存在を否定し遠慮をする。一方で家族は生活上の我慢を受け入れ、暮らし方を妥協する生活を強いられる。こうしたお互いの気遣いが不満として徐々に蓄積されていくことは決して快適な暮らしとは言えない。
こうした「心のバリア」を外し・・・・
⇒ 続きは、最新号『新建ハウジング紙面 11月10日号』に掲載しています
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