家づくりのプロセス
み:高性能というと耐震性能や断熱性能などが挙げられますが、最初はあまりピンとこなかったと。それでも実際にこれは大事だな、とか納得できたことはありますか?
縁:間取り図を考えてるときに性能の話もあって。耐震の話が多かったように思います。全館空調にしていて、エアコン一台で機械室から空気を流すようにしているので…、説明を受けて納得したというよりも、いいものであるのは当然でしょ、と信頼していました。夫と工務店との関係性が出来上がっていたので、技術的な不信感を抱くとかそういうのはなかったです。
み:地震に強い家のメリットや、断熱性能を高めると光熱費が…とかその辺りの話でピンとくるところはありましたか?
縁:前に住んでいた家の(冬の)電気代が月3万円くらいかかっていて(電気のパネルヒーターを使っていた)、3万はさすがに…!とは思っていましたが、この家にすると電気代がめちゃくちゃ下がるという話は聞いてました。全館空調でエアコン一台なのに電気代が下がるっていいなと。これから電気代が上がっていくでしょうから、それが下がるのはいいと思いました。
み:電気代もそうですが、体への負担が少ない、ストレスがない、快適というような健康面へのメリットも説明されたと思うのですが、それによって優先順位が上がったということは?
縁:それはありますね。風邪をひきにくくなるとか、カビが生えないから体に悪くないとかを聞いたら、子育てをしているので、体へのメリットはいいなと。
み:そもそも注文住宅という概念はありましたか? どこまで注文できるのか、とか。
縁:私はこちらの要望をずーっと言っていたように思います(笑)。
み:細かい部分まで自分の思うようにしたいという思いがあったんですね。
縁:基本的には提案の中にいろいろ含まれていましたが、洗面ボウルとか細かいものは自分で好きなものをという思いがあったので、なるべく自分で全部チェックしました。結局はコストで、どう折り合いをつけるか、ということになったかな。
例えば、本当は木製サッシにしたかったんですが、費用がかかりすぎて他のなにかをあきらめるしかないとなったら、原点回帰をして「そもそも縁側のある家に住めればOKだよね」というところに戻って、なら樹脂サッシでもいい、となりました。一旦コンセプトに戻って、本当にそれが必要なのか?を考えました。
み:まずは自分のやりたいもの・ことをすべて伝えて、費用面などが出てきた段階で、削れるものを削るという。
縁:そうなんですよね。夢から覚めるような感じ(笑)。あんなに提案していただいたのに…というのもね…。
み:注文住宅ってなんでも注文できるように思ってあれもこれも、となりがちですが、大概予算と合わなくて、引き算していくと結局夢から覚めちゃうという話はよく聞きますね(苦笑)。
縁:そうなんです。でも設計士さんはできるだけ要望にこたえようとしてくれて、あとは耐震など、自社(工務店)が満たす基準と要望をどう両立するかというのをすごく頑張っていただきました。
例えば私が「耐震性能は落としてもいいから」というと「いや、それは無理です」とか。家としての価値が低くなるからやめたほうがいいし、耐震等級3を標準仕様としているから、と。そうなると、じゃあどうする?と。工務店と私たちの間に挟まれて設計士さんは大変な思いをされたと思います。
み:この性能を実現するにはできないことはこれだけあります、というようなルールや作法のようなものをあらかじめ伝えてもらえたらいいのかもしれないですね。
縁:そうなんですよね。私たちは何ができて何ができないのかわからない。そういうのが事前にわかるといいのかな、と思います。
み:あえて詳細は出さないようにしているということもよくあります。
縁:結局家ってブラックボックスのようで、これにいくら、これにいくら、という詳細よりも、「標準仕様でこれです。」から始まるから、どこの何を削ったらいいのかがわからない。そういうところがちょっと…と思いました。
み:そこは悩ましいところで、そこまで詳細をちゃんと見たい人とそうでない人もいるから、細かい数字は出さないという会社もあれば、利益がそこに乗っているという部分もあるでしょうからね。もう少し透明化してお互いのストレスが減るような形になるといいですよね。
縁:(家を建てた)友人も、標準仕様のコストの詳細がわからないというのがすごくストレスだと同じことを言っていました。
み:標準仕様は決まっていて、オプションは細かく値段設定がされているんですけどね。
縁:だからオプションをつけていくしかない、と。
ずぼら優先の設計
み:耐震との絡みはありながら、間取り図はご自身で考えましたか?
縁:設計士さんから3案提案していただいて、検討して決めたという感じでした。プランの提案は間取り図で。
み:間取り図を見てイメージは浮かびましたか?
縁:ボツにした2案はイメージが浮かばなかったんですよね。私はすごくずぼらなので、「ずぼら優先の設計」を要望していました。縁側のある家の裏テーマは行動が楽な、行ったり来たりしないで済むようなプランにしたかったので、想像をして、自分でその行動があり得るか否かという目線で考えました。
玄関から冷蔵庫までの距離が長かったりしたら、あ、これはあり得ないな、とか。生活を思い浮かべるというよりも自分の性格的にこの行動はないな、というような見方でした。
み:生活シーンというよりも自分の性格でプランを眺めるというのはいいですね。
縁:昔何かの本で「片付けができない理由は家の間取りがおかしいから」というのを読んだことがあって。それを読んだ時に、なるほど、私の性格にこの家は合ってない、と思ったことがあって。もし家を建てるならずぼら優先の設計にしようと。
み:「ずぼら優先の設計」っていいですね。
縁:洗面所に洗濯機、その隣にウォークインクローゼットがあるので洗濯物は全部そこにかけておいて、季節ごとに1軍、2軍に分けて使わないものは2階のクローゼットに入れておく、というつくりにしてもらいました。
み:ずぼらでない仕様で作ってしまうと洗濯物が積み重なったり…ね。
縁:前の家はこだわりのあるデザイナーズ賃貸だったんですが、私には一つひとつの動作が多すぎたんですよね。いちいちドアを開けて、とか洗濯機からクローゼットまでが離れていたり、そういうのは無理だなと。だからこだわりの家は(反面教師として)とても参考になりました。
み:名だたる建築家の家に撮影に入ると、まずは片付けから始めないといけないというのはあるあるです。だからずぼらな性格の人がそういう家に住むと大変という気持ちはよくわかります。
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