建て主によってはこの段階であれもやりたい、これもやりたいという要望が溢れ出てくる。それを全部吐き出させて予算や使い勝手などと照らし合わせて整理する作業を大沼さんは行う。実際に変更することになるのはその一部だが、余さず検討したという満足感が建て主を納得させるため重要なステップだ。
ただし、Aさんの場合、予算を守りたいという夫の気持ちが強かったため、要望が膨らむことはなかった。むしろ劣化が酷かった屋根の改修について、「最初から予算を見ているので増額にはならない」と大沼さんに説明されて夫はほっとしていた。
見学時に夫が一番喜んでいたのがユニットバスだ。夫は人一倍身体が大きいこともあり、今の家の浴室に窮屈さを感じていた。1.25坪タイプの広さを実感して、打ち合わせ中にも何度かそのスペースを確認していた。
最後に大沼さんが夫に「気になる点はありませんか?」と聞くと、多少気になるのは屋根の補修くらいで後は安心して任せられるとのことだった。空間のかたちができはじめた段階で現場に足を運んでもらって打ち合わせすることは建て主との共通認識を高める上で大きな利点がある。そのことを改めて感じた。
次回<その3>(12月28日配信予定)は第70回の最終話として、引き渡し後の建て主の話を紹介する。
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