引き続き住宅ローンの契約に進んだ。住宅ローンに関する基本説明の後、担当者は住宅ローン関連の諸経費について説明を始めた。
最も金額が大きいのが保証料で約60万円。保証料とは債務者が返済不能になったときに保証会社が代わりに銀行などに返済するように、住宅ローンの債務者と保証会社が結ぶ契約の費用だ。加えて印紙代が数万円かかる。
そして、抵当権を設定するために夫名義で登記をし直す費用が約20万円。また住宅ローンの抵当権には増築部分の車庫の敷地は含まれないので、その表題を夫名義に変更するのは別途費用がかかる。
さらに大規模リフォーム後には面積が変わるので、母屋部分を再度登記をし直す必要がある。その費用はまた別にかかる。
このように敷地が2筆に分かれていて、かつ未登記の部分があったことから登記にかかる費用が40万〜50万円程度に上る。保証料と合わせると100万円を超えてくる。説明を受けた夫は「結構かかりますね」とぼそりと呟いた。
当初夫は土地建物の購入費用と大規模リフォームのための費用である2500万円を借りるつもりだったが、工事費が約200万円増え、さらに諸経費として100万円が余計に必要と分かり、増額を余儀なくされた。
そこで「もう200万円を足して2700万円でローンを組みたい」と銀行の担当者に伝えた。
すると担当者は「予備費がなくて大丈夫ですか?」と返答した。夫は判断の根拠がないので動揺した。妻は夫の判断に従うという。
だが返済に不安が残る金額は借りたくない。担当者は「3000万円までは会社からOKを貰っています」と押してくる。夫は困惑して「普通はどのくらい予備費を見ておくものですか?」と担当者に尋ねる。担当者は「200万円くらいのことが多いです」と答えた。大沼さんも担当者に同意した。
そして住宅ローンで家電や家具なども購入できること、金額が残れば繰り上げ返済すればよいとアドバイスした。
夫は再度考え込んだ。そんな夫に担当者は電卓を叩いてひと月あたりの返済額を示した。現在の家賃よりは高くなるが返済可能な金額だ。最終的には35年返済・2900万円、変動金利で住宅ローンを組むことになった。月々の返済額は8万円弱となった。そして工事中の期間は今の住まいの家賃と2重払いになるので、負担を抑えるように金利分だけを返済するかたちを取ることにした。
打ち合わせの時間としては請負契約よりも住宅ローンの説明と契約が圧倒的に長くなった。夫は「疲れましたね」と苦笑いをした。一生分の借金を決める場であったことを考えると当然だろう。
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