建築の50、100年先の未来を考える――。
新潟で住宅から大型非住宅まで、設計から自社施工まで手掛ける星野建築事務所(星野貴行社長)は、全棟構造計算・温熱計算を実施し、デザインと性能を両立させた家づくりを展開している。
どのような住宅設計や施工に対する考えで “高付加価値 ”を生み出しているのか聞いた。
同社社長の星野貴行さんは、学生時代に米国に留学し、約5年間、建築や美術を学ぶ生活を送っていた。帰国したのは21歳の時。県内で設計事務所を経営し設計士として活躍していた父・雅明さんが亡くなり、急遽会社と仕事を引き継ぐことになった。一級建築士の資格取得のために勉強しながら、現場に出る日々が続いた。星野さんは「残された案件をこなした後は仕事が途絶え、ほぼゼロからのスタートになった」と振り返る。
そんな中、同社は徹底した「顧客目線」を愚直に続けていくことで、それが独自性に繋がり、じわじわと信頼を得ていくことになる。
■SEは新しい構造と価値を生んだ
星野さんに「難しい・できない」という言葉はない。同社の家づくりに対する“理念”に共感した顧客に対し、徹底的にヒアリングに時間を掛け、顧客の夢(要望)を言語化し、提案に落とし込む。デザインに留まらず、建築の専門家として、構造や性能面も含めて最高峰のレベルまで引き上げる提案も行っている。
その過程で出会ったのがエヌ・シー・エヌ(東京都港区、田鎖郁男社長)だった。2005年に業界を激震した一連の耐震偽装事件を受け、翌年に建築基準法が改正された。当時、これによって当初の予算内に収まらずに計画を断念せざるを得ない顧客がいた。星野さんは「顧客が望む夢を予算や耐震性で諦めてほしくないと調べを進めるうちにSE構法にたどり着き、無事プランを変えることなく、顧客の要望を実現できた」と振り返る。
「全面に大開口を付けたり、天井まで届く掃き出し窓の設置が可能になり、設計の幅も大きく広がる。SE構法は木造と鉄骨造の間の新しい構造と価値を生んだと捉えている」。
■経営者のサードプレイスにも
同社は、エヌ・シー・エヌが主催する「重量木骨プレミアムパートナー」に選出されている。SE構法を採用する国内500社以上の事業者の中から、設計・施工の高い品質や技術、性能などに加え、第三者機関による現場検査、完成保証、経営状況など高い基準をクリアし、審査によって選ばれた約60社が所属している組織だ。
星野さんは「性能の数値的なエビデンスと、それを上場企業のエヌ・シー・エヌが縁の下から支える体制に信頼感が向上し、顧客層にも変化が出てきた。高所得層は性能や保証に留まらず、経営のバックグラウンドも含めて調べる傾向があり、いい影響を与えている」と述べ「医者や経営者などの顧客層から受注が増えて、ここ数年で平均受注額が3千万円台から
5千万円台に引きあがった」と明かした。
また、プレミアムパートナーの会合では各地で家づくりを通じた「高付加価値」の戦略に長けた、地元では知りえない同業の経営者と繋がる機会にもなるといい「志の高い経営者とクローズドなコミュニティで有益な情報交換やコミュニケーションが取れる場所にもなっている」と話す。
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