木材保護塗料の効果
外壁の木板には美観のために木材保護塗料が塗られることが多い。木材防腐の研究者に聞くと、外部における木材塗装は主に美観のためのもので耐久性を付与する効果はそれほど期待しないほうがよいという。
塗料には塗膜が健全なうちはその撥水性により、水を滞留しにくくする効果がある。ただし、外壁の場合は垂直に木板が設置されているため、塗膜の撥水性がなくても水は滞留しにくい。また、塗膜の劣化とともに撥水性は薄れてくる。逆に塗膜の割れや剥離などを起こすまで放置すると、それらの微細な凹凸により、水が滞留しやすくなる可能性がある。
また木材保護塗料のなかには腐朽菌を殺す防腐成分を含むものがある。このタイプは一定期間木材腐朽菌を寄せ付けない。腐朽のリスクを減らす目的であれば、このタイプの塗料が第一選択肢となる。ただし、後述する加圧注入材に比べると効果は低い。
ただし、防腐成分が塗布されているのは表層のみなので、板が割れたり、節が抜けたりすると、塗装されていない部分が露わになり、そこから腐朽菌が入り込んで腐朽につながることがある。
このように外壁板張りに塗装する場合、美観や撥水性、防腐成分の効果などを保つには塗り替えが前提となる。木材保護塗料の屋外暴露試験を行っている阿部塗装店の阿部康悦さんは「試験体を45度傾けて屋外暴露試験を行っているが、耐光性に優れた塗料の上塗りを3回にしても塗膜の寿命は5年程度。3年もたないものもある。また塗料の価格と性能は関係ない。促進試験と屋外暴露試験の傾向とも違いが出る」と指摘する。外壁は垂直なので屋外暴露試験よりはもちがよくなるが、長持ちする塗料でも7〜8年と推定される。
試験結果やこれまでの経験を踏まえて、外壁板張りの塗装を長持ちさせるためのポイントについて阿部さんは「表面を仕上げずに鋸挽きのままとし、塗布量を増やし、屋外暴露試験の結果がよい塗料を使用する。その上で油性や自然系塗料の場合は上塗り3回塗り、水性や半造膜の塗料の場合は上塗り2回塗りする」と話す。
このように木材保護塗料は数年ごとの塗り替えが前提となる。ただし、数十年にわたって適切に塗り替えを実施する住宅は少数だ。塗り替えがなされずに塗料が剥げ落ちている住宅も多いが、大抵は外壁に致命的な傷みを生じずに性能を保っている。
前出の菅沼さんは「外壁板張りの耐久性は塗料よりも、軒の出や建て物の方角、木板そのものの状態に大きく左右されると思われる」と話す。事実、当初より無塗装の外壁板張りや板塀のなかにも数十年以上、大きな傷みが生じていないものが多数ある。耐久性の面からは外壁板張りに塗料は必須ではないと言える。
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