プラスワンで連載していた「木造住宅「耐久性向上」のレシピ」が、「新建ハウジングDIGITAL」に場所を移して隔月30日配信で再開する。今回は外壁板張りの耐久性について、実務者の取材をもとに考察する。基本的な注意点を押さえれば、外壁板張りは長持ちして費用対効果の高い地上げである。(取材・文:大菅力)
腐朽対策の基本は水を切ること
板張りの外壁が劣化する主な要因は「腐れ」である。腐れの原因は木材腐朽菌が木材の主要な成分を分解することにある。まずは木材が不朽するメカニズムを見ていくことにする。
木材の主成分はセルロースとヘミセルロース、リグニン。ヘミセルロースがセルロースを取り囲み、リグニンがそれらの隙間を埋めるように一体化させている。
これらを分解してボロボロにするのが、木材腐朽菌というキノコの仲間だ。菌糸が細胞壁中のセルロースなどを分解して栄養にして成長していく。
木材腐朽菌は2種類に分かれる。ひとつはセルロースとヘミセルロースを分解する褐色腐朽菌。もうひとつはセルロースとヘミセルロースに加えてリグニンまで分解する白色腐朽菌だ。木造住宅では褐色腐朽菌の被害が多い。
褐色と白色という呼称は腐朽後の木材の色に起因している。白色腐朽菌はリグニンまで分解するので、木材本来の色がなくなってしまう。
木材腐朽菌は、日本全国どこにでも存在する。都市部にも緑豊かな郊外にも、腐朽菌は存在する。地面に近いところでも高層部分でも、腐朽菌の数は基本的に変わらないことが分かっている。
木材腐朽菌は木材の含水率が30%以下だと生育できない。木のなかの自由水がなくなり、水が液体の状態では存在しなくなるからだ。
また、木材腐朽菌は気温が20℃以下だとほとんど活動しない。そして生育には酸素も必要となる。水と温度と酸素が揃って木材腐朽菌は活動を始める。逆に言うと、そのいずれかを断つことが腐朽防止につながる。現実的には水を切ることが重要になる。
耐久性が高い心材を用いる
また木材は材によって腐朽しやすさが異なる。一番影響を受けるのが辺材と心材による違いだ。木材腐朽菌が好むのは辺材であり、心材は比較的腐朽しづらい。
これは木材の生育の仕組みに由来する。木材は樹皮に近いほど生命活動が活発である。この細胞が生きている部分が辺材で中央の心材の細胞は死んでいる。
立木の状態のとき、辺材の細胞に腐朽菌が侵入しようとすると、細胞は抗菌成分を出して抵抗する。心材の細胞は死んでいるので抗菌成分を出すことができない。その代わり、木材の細胞は死ぬ間際、すなわち辺材から心材に変わるときに抗菌成分を大量につくって蓄える。その際に心材特有の濃い色に変色し、腐朽しづらい性質に変わる。
心材の細胞は立木のときから死んでいるので、伐採後も性質は変わらない。一方、辺材は伐採されると死んで抗菌成分が出せなくなる。もともと細胞に抗菌成分は蓄えていないので、木材腐朽菌に容易に分解されてしまう。
心材の抗菌成分の強さは樹種で異なる。国内の建築用材ではヒバが強く、次いでヒノキ、その次がスギとなる。輸入材ではベイヒバやベイスギ(レッドシーダー)がヒノキと同等と評価されている。
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