新建ハウジングが運営する工務店向けオンライスクールサイト「チカラボ」。
そのコンテンツのなかから、辻 裕介さん(ひと・住まい研究所)に「マイスター」(講師・コンテンツ提供者)として運営いただいている「これからの10年の基盤となる「自社スタイル」確立のすすめ」という「ルーム」(連載)から、「コロナ禍の今だからこそ、工務店としての軸をつくる」という記事の全文を紹介します。
元・工務店の実務者である辻さんだからこその内容になっています。
「チカラボ」で辻さんの他の記事もぜひお読みください。
<転載ここから>
はじめまして。
ひと・住まい研究所の辻です。
プロフィールでも紹介されていますが、私は地域工務店で20年以上、主に個人の注文住宅の建築に関わってきました。
現在はそのキャリアを生かして、地域工務店を中心に様々な業務上の支援をしています。
今回チカラボで皆さんにお伝えするテーマは「自社スタイルを確立しよう」というものです。
そしてその中身はタイトルにもあるように「これからの10年の基盤となる」ことを想定したものです。
昨今の新型コロナの影響で、今後働き方や業界の枠組みそのものが変わるかもしれない状況下にあります。
そのため、これからの変化を予測し業務上の備えをしておくことはとても重要なことだと思います。
しかし住宅事業においてコロナ後も恐らく「変わることのない」本質的な部分もあります。
そうしたところをしっかりと見つめ直しブラッシュアップしておくことも、もう一方で必要なことです。
それが「これからの10年の基盤となる自社スタイルの確立」というわけです。
むしろ先行き不透明なこのような時期だからこそ、私はそうした企業としての「軸」をつくるべきではないかと思っています。
これから連載で、このテーマについて私見を書き綴ってみたいと思います。自社にとっての「変わらないもの」を定めることで、「変えるべきもの」も見えてくるはずです。少々長めの連載になると思いますが、どうぞお付き合いください。
「自社スタイル」とは何か
「自社スタイル」とはどのようなものなのか、まずはそこから始めてみたいと思います。
住宅事業を営む工務店であれば、家づくりにおける「自社らしさを持つ」ことを示しているのだと思います。
つまり企業として社内で共有している個性であり、特長であるということでしょう。
もし顧客から「おたくの会社の家づくりのスタイルとはどんなものですか?」と尋ねられたとしたら、皆さんは明確に答えられるでしょうか?
当たり前のこととして備わっているように思えても、ちゃんと整理された内容で明確に答えられる会社は案外少ないのではないかと思います。
「自社らしさを持つ」ということは経営上の指針にも関連するものですし、時として立ち戻る「企業の原点」にもなります。
また顧客の選択要素の1つにもなるわけなので、明確に答えることができないのであれば、しっかりと考えておく必要があります。
ただその中身や範囲はあいまいで、定義付けられてはいません。自社のスタイルを前面に謳っている会社を見ても、その内容は様々です。
本来は自社の家づくりに対する考え方や想いであり、またそうした家づくりへの取組み全体を指しているのだと思います。
つまり「家づくりへの考え方や想い + それらに基づく具体的な業務上の指針や取組み」という組合せが「自社スタイル」の前提ではないでしょうか。
実際そのように具体的な形で業務に落とし込めていなければ、社内的に共有することは難しいですし、対外的にも認識されにくいことでしょう。
うわべだけのスタイルでは会社の軸とはならず、これからの10年の基盤にもなりません。
考え方や想いだけでなく、それらを具現化してこそ「自社スタイル」と言えるのだと思います。
工務店としての「スタイル」とは
では工務店としての「スタイル」とはどうあるべきなのでしょうか。
住宅事業を営む工務店は、家づくりという「モノづくり」を生業としています。
当たり前のことですが「カタチにしてなんぼ」の世界で生きています。
つまり家を「カタチづくる」ことがその本分(本来尽くすべきつとめ)であるわけです。
そうした工務店にとっての「自社スタイル」には、家づくりに対する考え方や想いはもちろんですが、本分である「カタチづくる」ための「具体的な生産の分野」が何よりも重要な位置を占めることになります。
先に述べた「具体的な業務上の指針や取組み」にあたるものです。
自社の家づくりに必要となる1つ1つの工程、つまり「つくるプロセス」そのものを「自社スタイル」の核にするべきだということです。
実際にいい家をつくるためには、適正な作業と手順で構成された1つ1つの工程の積み上げが必要不可欠であり、それらは家づくりのもっとも本質的なものだと言えるでしょう。
よって私は工務店における「自社スタイル」とは、日常的に営まれる住宅の「つくるプロセス」に、いかに「自社らしさ」を組込めるかであり、そこにもっとも注力すべきであると思っています。
こうした「自社らしいつくるプロセス」は、モノづくり企業である工務店の軸となります。
そして「変わることなく」追い求めていくべき「これからの基盤」となるものです。
ちなみにここで言う「つくるプロセス」とは、なにも施工だけのことではありません。
設計施工一体型の工務店であれば、設計はもちろんのこと、その他すべての業務(広報・営業・メンテナンス)を網羅したものを指します。このあたりの話しは後日触れていきたいと思います。
工務店の自社スタイルの中心(核)= 家づくりの考え方や想いに基づいた「つくるプロセス」
このことを踏まえて、これからその具体的な確立の仕方を考えていきます。
<抜粋ここまで>
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