(よつい・しんじ)
1971年、福岡県生まれ。信州大学大学院農学研究科修了後、緑化会社や有機肥料会社の社員、農業経営などを経て2001年に独立。土壌コンサルタントやパーマカルチャーデザインを主業務に活動する。山梨県北杜市の雑木林のなかにある一軒家を購入。開墾と増改築をい、パーマカルチャーデザインによる暮らしを実践中
明治の開国前後、日本に来た外国人が一様に「何てきれいなまち並みだ」と驚嘆したのは有名な話。江戸はいまも、持続可能な都市のモデルとしてよく引き合いに出されますね。
落ちている髪の毛一本もかつらに利用し、古くなった紙はほぐして漉き直す。し尿さえ売買の対象とし、農地にかえす。江戸をはじめ日本のまちは、環境と経済の最適なバランスの上に成立していました。その暮らしの風景が、外国人の心を打ったのだと思います。
(中略)
1件の家庭が1日の調理・給湯に必要なガスを2m3とすると、それを発生させるのに人30人、牛1頭、豚なら8頭、ニワトリなら300匹の糞が要る。まずそれを集めるのが大変です。
またそれが得られたとしても、でき上がった大量の液肥を使えるるだけの農地を持つ人がなかなかいない。一世帯で考えていたらまず無理で、コミュニティー単位でしくみを設計していくことが不可欠です。
ところが、いきなり都会の人が田舎に集まってコミュニティーをつくろうとしてもうまくいかない。集まる人たちに暮らしの実体験やスキルがないからです。誰かに依存しないと成り立たないしくみは続きません。
コミュニティーは個々の世帯が暮らしのスキルを持ったうえでつながっているもの。ならばやはり、個々の暮らしのスキルを上げることが、社会を変える早道なんですね。身近なところでは、家を建てる設計者が地域の自然のしくみをふまえたうえで敷地や建物をデザインしてあげる。すると家は、もっと暮らしをサポートようになりますよ。
本来、家にはその地域で暮らしていくための機能が備わっています。軒下や土間空間、その近くに設置されたかまどや石釜は、畑と家とを結び付けるしかけです。そうしたしかけがあることで調理や食事の方法・内容も変わり、ライフスタイルのきっかけが生まれる。
暮らしのスキルを高めるにはアイテムや手法、手順が必要です。いま僕たちがやらなければならないのは、具体的なライフスタイルをどんどん提案すること。
また同時に「こうしたら楽しそうだ」「こんなことやったら幸せそうだ」と、そんなふうに思える家を建てたり、土地の使い方をアドバイスしたりしていくことが、社会を豊かにしていく第一歩だと思います。
(後略)
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