滋賀県大津市の商工会青年部に所属する工務店、大工、電気工事、保険代理店の4人は共同で新会社・T-BOXX(=ティーボックス、辻正樹社長)を設立し、住宅など建築現場と職人をマッチングするアプリや中小事業者が連携して建築の仕事を受注できる仕組みを開発、本格的なサービス展開に乗り出した。同市内で電気工事会社を営む新会社社長の辻さんは「職人の価値が正当に評価され、それに見合った対価を受け取れる環境を整備したい。職人の価値が上がれば(建築業界への)入職者も増え、慢性的な職人不足の解消につながるはずだ」と力を込める。両サービスとも全国に広げていきたい考えだ。
大工や左官、板金など建築系の職人と工務店や建設会社など建築現場の担当者をマッチングするアプリ「ポチプロ」の最大の特徴は、職人が自ら報酬額(単価)を決めて提示し、その提示額で業者からのオファーを待つという点だ。辻さんは、現場(企業)側が条件を提示して職人を募集する一般的な建設系のマッチングアプリとは「逆のフロー(流れ)」とし、「職人が自ら決めた報酬額や職種、空いているスケジュールなどをアプリに入力する。現場にとっては職人単価がこれまでよりも上がるかもしれないが、希望通りの職人に声をかけることができる。 腕のいい職人なら現場は日当3万円でも来てほしいはず。若い人を建築業界に呼び込むためには、職人側から単価を上げていくことが必要」と話す。
職人は登録無料。企業側は、有料登録(月額2980円)することで、職人を検索し、オファーを出すことができるが、現在は無料で登録を受け付けている。
中小事業者が加盟するウェブサロン
同社では、ポチプロとあわせて開発した、工務店や大工、設計、各種専門工事、保険会社など、家づくり・ 建築に携わる地域のあらゆる業種の中小事業者らが加盟するウェブ上の「T-RING(ティーリング)サロン」も運営。
同サロンについて辻さんは「今まで専門外で断るしかなかった仕事や、工期が重なって受けられなかった仕事、規模が大きくて個人では受けきれなかった仕事など、やりたくてもできなかった仕事を紹介し合う仕組み」と説明する。投げ掛けられた仕事を、規模や職種などの都合からあきらめざるを得なかったのが、サロンで一緒にやってくれる仲間を募ってプロジェクトチームを結成することで、手掛けられるようになるというイメージだ。
「T-RINGをのぞけば仕事がある。みんなが味方で、みんなで助け合って、みんなで稼ぐ。ここでは、みんなが営業担当でもある。サロン加盟には面接や審査があるので優良事業者しか集まらないのも特徴」と辻さんは話す。仕事の依頼や受注、条件交渉、報告などは全てスマートフォンやパソコンから行う。
サロンには建築関連事業者として登録し、仕事の紹介や依頼、受注ができる「加盟店」と呼ばれる会員と、建築業ではないものの仕事の紹介や依頼ができる「一般会員」がある。いずれも仕事を紹介した場合は、紹介手数料を受け取ることができるという。サロンの定員は約300人で、20万世帯に1つのサロンをつくる構想だ。工務店・ 大工20、軽鉄7、土木・基礎10など業種ごとに定員枠も設ける。
加盟店は加盟金15万円とシステム使用料として月額4980円、一般会員は加盟金3万円とシステム使用料として月額980円がかかる。現在は、運用が始まったばかりのため、初期メンバーは低価格でシステムが利用できるようにしている。
地元の大津市内では、ポチプロとともに、すでにサロンも動き出している。 ポチプロとサロンを連携させて運営していく方針で、サロン会員はポチプロの会費を無料にするといった特典も設けている。辻さんは「とにかくたくさんの工務店や職人に登録してほしい。登録が増えればそれだけ仕事が増える」と訴える。同社では、全国10万人の登録を目指し、現在、各地域のサロン運営事務局(代理店)を募集している。
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