不動産経済研究所(東京都新宿区)は6月18日、5月の首都圏と近畿圏のマンション市場動向を発表した。新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言下だったことで、首都圏の新規発売戸数は前年同月比82.2%減の393戸となった。これは1973年の統計開始以降最低で、686戸だった4月に続き2カ月連続ワーストとなった。契約率は12.3ポイント上昇の72.3%で、ユーザーの購入意欲の高い物件に絞られたことでアップした。
新型コロナのため大手デベロッパーはほぼモデルルームが閉鎖、中堅どころも3密対策で開場していても来場を制限し、販売活動は困難を極めた。エリア別の発売戸数は東京都区部が69.9%減の235戸、都下が89.8%減の35戸、神奈川県が83.4%減の79戸、埼玉県が91.3%減の24戸、千葉県が93.9%減の20戸。1戸当たり平均価格は6.4%上昇の6485万円、m2単価は21.3%上昇の108.4万円。
6月18日に国土交通省で行った記者説明会で不動産経済研究所・調査事業本部企画調査部の松田忠司主任研究員は「コロナにより、春発売を予定していた物件も秋に延期するなど、販売計画に遅れが出るデベロッパーが多い」と指摘。さらに東京オリンピック・パラリンピックの延期により選手村マンションの「HARUMI FLAG」(分譲予定戸数4145戸)の販売が延期となった影響も、参画している各社の戦略に影響を与える点も指摘した。6月の発売戸数予想は1000戸で、このままの単純計算で今年上半期(1~6月)の発売は6954戸となり、これまで最少の1992年の1万959戸を大きく下回る、初の1万戸割れになる。
松田氏はさらに「マンション実需のメイン顧客は、世帯年収1000万円程度の共働き世帯。夫婦どちらもボーナスが下がるなどのケースが増え、景気が悪くなると発売は絞らざるを得ない。数年単位での影響も考えられる」とコロナの影響について述べた。
近畿圏の5月の新規発売戸数は前年同月比84.6%減の214戸で、5月としては最低。バブル崩壊後の1991年8月の176戸以来の低水準となった。契約率は17.7ポイント下落の50.0%。5月21日の緊急事態宣言解除後に早期成約が見込めない住戸の発売が多く、大幅に契約率が下がった。1戸当たりの価格は3.2%上昇の4286万円、m2単価は4.2%下落の61.6万円。6月の発売戸数は1000戸を予想している。
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