『新建ハウジング』5月20日号
コロナ後も成長維持する基盤固め
長期的視点で全面オンライン化
以前からIT化に力を入れてきた楓工務店(奈良市)は、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、オンラインによる接客やテレワーク(在宅勤務)を拡大。現在、ほぼ全ての顧客とオンラインによる打ち合わせを行い、社員・パート約70人のうち3分の2がテレワークで業務に当たる。社長の田尻忠義さんは、コロナ禍による目の前の厳しい経営環境に向き合いつつ、「コロナ後にも成長を維持する基盤固めを怠りなく進めたい」と気持ちを引き締める。
接客・営業のオンラインへの切り替えは早く、3月中には常設のモデルハウスの受け入れを休止し、リアルの完成見学会も取りやめた。ホームページのトップにオンライン相談・打ち合わせの流れを説明する「30秒動画」を置いて分かりやすい形で誘導し、現在は新規、既存問わず、ほぼ全ての顧客とオンラインでのやり取りを進める。
新規の対応は、ウェブ会議アプリ「Zoom(ズーム)」を活用し、すでに具体的な打ち合わせに入っている既存顧客とは、数年前から導入している「Chatwork(チャットワーク)」でコミュニケーションする。
「会わずに家づくり」の実績も
田尻さんは、スムーズにオンラインに移行できた理由について「6年ほど前に、東日本大震災をきっかけに千葉県から奈良県への移住を決めた60代の夫婦が暮らす住宅を手掛けた経験が生きた」と話す。遠方にいる施主夫婦と頻繁に会って打ち合わせすることができないため、プランや見積書、図面のやり取り、上棟の作業風景や現場の進捗報告など、Chatworkの画面共有やビデオ通話などの機能をフル活用して進めた。
結局、引き渡しまでに実際に顔を合わせたのは、契約時と施主夫婦が孫を伴って奈良県内を旅行した際の2回のみで、「その2回も、どうしても顔を合わせる必要があったからというわけではなかった」。同社としては、施主とほとんど会うことなく進める家づくりは初めてだったが、「まったく不安、不満はなかった」という言葉をもらうほど、施主の満足度は高かった。
顧客の不安解消しCX向上
田尻さんは「施主が求めているのは、直接会うことではなく、正確で分かりやすい情報の共有とこまめな連絡や報告だ」と指摘、「そういった施主の要望に応えるには、むしろオンラインの方が優れている点がたくさんある」と説明する。このほかにも同社では、乳児がいて外出がままならない施主などに対して、積極的にオンラインによる打ち合わせを提案してきた。
新型コロナの影響を受け、全面的なオンライン化に踏み切ったことで「これまで以上に、顧客に寄り添い、不安を解消する体制を確かなものにできる」と田尻さん。コロナ危機を乗り切るツールの位置づけではなく、接客におけるCX(顧客体験)向上など長期的な視点で自社のスタンダードとして定着させたい考えだ。
「マニュアル化」が威力発揮
業務も育成もコミュニケーションも、これまでと変わらずに
ウィズコロナの受注戦術や働き方として、住宅業界でもにわかに注目を集めるオンライン接客・営業やテレワーク(在宅勤務)だが、IT経営を実践してきた楓工務店(奈良市)社長の田尻忠義さんは、「導入には入念な準備と長期的な展望が欠かせない」と訴える。同社が柔軟に対応できた背景には・・・・
⇒ 続きは、最新号『新建ハウジング紙面 5月20日号』に掲載しています
【新建ハウジング5月20日号 その他の記事】
<8・9面> 連載/「n工務店」の経営術
[番外編]少数精鋭×独自性×高付加価値の戦略解説
<11面> データ/住宅着工 2019年度は5年ぶり90万戸割れの88.3万戸
<15面> ウィズコロナ/工務店 休校中の子どもたちにオンラインで学び場
<16面> 動画活用/YouTube 温熱環境など解説、1カ月で登録1.5万人突破
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