新型コロナウイルスの感染拡大により中国の生産活動が停滞している影響で、住宅設備・建材の納期遅延が問題化している。そんな中、国土交通省は都道府県や確認検査機関などに対し、設備などの一部が未設置の場合でも完了検査を実施するよう周知し、対応が進んでいる。ただし、前提として、建築主への説明や合意が必要になる。弁護士の秋野卓生さんに注意点を聞いた。
国土交通省は、一部の建材・設備の納品が遅れている建築物に対して、未設置の状態でも完了検査を速やかに実施するよう求める要請文書「新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う完了検査等の円滑な実施」を、特定行政庁と指定確認検査機関、登録住宅性能評価機関、住宅金融支援機構などに出し、建材・設備の一部が未設置な状態でも、建築基準法に基づく完了検査を実施する手続きを取ることを明確化しました。
例えば、トイレ2台のうち1台が設置できないとしても、完了検査を指定確認検査機関などに申請する際、建築会社は建築主に十分説明した上で、申請書の「確認以降の軽微な変更の概要」欄(第三面)に変更内容を記載。指定確認検査機関は、申請書の記載内容を確認し、一部の建材・設備がないことを「軽微な変更」であると確認できたら、速やかに完了検査を実施することとなりました。
法律相談の現場では、完了検査終了後、建築主に建て物引き渡しをするに際しては「引渡確認書」を取り交わし、引渡確認書に「本建て物の引き渡しにあたり、コロナウイルスの影響によりトイレ2台のうち、1台については未設置で引き渡し手続きを行うこと、トイレ1台は、納品次第、取り付けを実施すること(遅延損害金は不可抗力ゆえ発生しない)を発注者・受注者双方確認致します」と記載する事をアドバイスしています。
その際に使用する書式を作成しましたので、ご活用ください。
※秋野さん推奨の「引渡確認書」の書式例は以下からダウンロードできます。
秋野卓生弁護士プロフィール
匠総合法律事務所代表社員弁護士として、住宅・建築・土木・設計・不動産に関する紛争処理に多く関与。2018年度より慶應義塾大学法学部教員に就任(担当科目:法学演習(民法))。管理建築士講習テキストの建築士法・その他関係法令に関する科目等の執筆をするなど、多くの執筆・著書を手掛ける。一般社団法人日本建築士事務所協会連合会理事・法律顧問弁護士。一般社団法人住宅生産団体連合会消費者制度部会コンサルタント。[email protected]
※こちらもあわせてお読みください>>>
【新型コロナ対策ツール】秋野弁護士・緊急寄稿まとめ
新建ハウジング タブロイド版では、新型コロナ関連ニュースを詳しくお伝えしています。
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。