積水ハウス(大阪市)は国内戸建て事業を3ブランド戦略で進める。2月に設立した子会社による「積水ハウス ノイエ」を中心に3000万円以下、3000万~5000万円の中級帯、5000万円以上の高級帯の3つですみわけを図る。
「積水ハウス ノイエ」はこれまでグループ会社の積和建設各社が、「積和の木の家」として低価格の在来木造住宅を施工・販売していたのを再編し、セカンドブランド化したもの。2020年1月期は積水ハウス本体で注文住宅8793棟、分譲2014棟で計1万807棟を販売した。「積和の木の家」は528棟にとどまっているが、今期(2021年1月期)から3年間の第5次中期経営計画の最後である2023年1月期に1000棟にまで高める計画。3月6日に東京都千代田区で行われた記者会見で仲井嘉浩社長は「この価格帯での積水ハウス品質の施工と、積水ハウスのカスタマーセンターによるアフターサービスは訴求ポイントになる」と説明した。
5000万円以上のハイスペック需要は首都圏の3階建てや、関西や福岡エリアの大型2階建てが多いという。仲井社長は「当社の戸建ての棟単価は4000万円程度だが、ボリュームゾーンは3100万円くらいで、5000万円以上にもうひとつ大きな需要があり、ならして4000万円程度」と説明。価格帯を明確に分離し、低価格帯以外に3000万~5000万円のゾーンと5000万円以上の高級帯の戦略をそれぞれ実行していく。
新型コロナウイルスの影響について仲井社長は「1~2月の展示場来場者は多かったが、3月は落ち込むだろう。しかし個別訪問にシフトするのと、法人の賃貸住宅需要でカバーしたい」とした。住宅設備の調達遅延による引き渡しの遅れについては、「まず代替品を設置し、その後に施主希望の設備に入れ替えることで対応したい」と述べた。
賃貸住宅については、都心部に所有地がある法人への働き掛けを強めていく。子会社の鴻池組とも連携し、ホテルなど大型施設系建築にも注力する。市況が悪化する中で、2020年1月期の賃貸住宅事業は売上高1.3%減の4106億2200万円、営業利益が2.9%減の489億3800万円にとどめた。仲井社長は「賃貸住宅事業は都市部に集中しており、特に立地がいい場所は当社が、それに次ぐエリアは子会社の積和不動産(現・積水ハウス不動産)が手がけ、両社で連携してきた。市況は悪化しているが、このエリア戦略が奏功している」と述べた。
国内は大型建築・土木の他、リフォームや賃貸管理といったストック事業に注力する。海外は米国、豪州、英国で戸建て販売を進める他、今期は米国の賃貸住宅5物件の売却も予定している。消費増税の反動減もあり、戸建て注文住宅の売上は、今期は前期比11.5%減の3460億円で、中計最後の2023年1月期も3700億円にとどまる見込みだが、大型建築・土木、ストック、海外事業の進展などで2023年1月期は売上高が2020年1月期と比較し11.8%増の2兆7000億円、営業利益が7.1%増の2200億円を狙う。
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