新型コロナウイルスの感染拡大により中国の生産活動が停滞していることで、水まわりなど一部の住宅設備機器・建材について国内メーカーによる納期の遅れが発生するなど、住宅業界にも深刻な影響が出始めている。
そんな状況下における顧客対応として必要な「工期変更の合意書を交わす」対応を、弁護士の秋野卓生さんに解説してもらった。
「顧客への告知と合意書の取り交わしを 」
今回の問題は、納期がいつになるか不明確であるという点にあります。
1.まず、お客様に告知(おしらせ文書)をしていただき、2.納期が明らかになった際に工期変更の合意書を交わす、という対応をお勧めしたいと思います。
東日本大震災の際に起きたサプライチェーン崩壊による納期遅延問題の際は、本当に納品がいつになるか皆目見当が付かなかったので、契約で定めた工期を期限の定めのない契約へ変更合意をすることをアドバイスしました。
本稿執筆時点(2月22日時点)では、東日本大震災の時と同じような深刻な事態であるかどうか判断できる情報がありませんが、状況によっては、同様の事態、またはそれ以上の事態である可能性があります。
その場合には、契約上の工期を「期限の定めのない」契約に変更する合意書を交わす必要があり、その場合の書式例(※)を作成しましたので、皆様の参考にしていただければ幸いです。
なお、今回の事態は、不可抗力と考えられますので、住宅会社に責めに帰すべき事由はなく、遅延損害金の負担の必要はありません。 また、完成間近の建て物(3月末までに完成させ引き渡しをする約束となっている建て物もたくさんあるはずです)では、住宅設備の一部未整備のまま検査済証を出すことができるか?という法的論点があります。この点については、守秘義務の関係上、ここでは公にすることはできませんが、過去に検査済証を出した前例もありますので、関係機関とよく協議していただきたいと思います。
また、今後の契約客については、 説明責任という観点から、メーカー発行の資料をスマートに交付する運用(リスク説明はしておく)などの対応をお願いしたいと思います。
※秋野さん推奨の「工期変更合意書」の書式例は以下からダウンロードできます。
秋野卓生弁護士プロフィール
匠総合法律事務所代表社員弁護士として、住宅・建築・土木・設計・不動産に関する紛争処理に多く関与。2018年度より慶應義塾大学法学部教員に就任(担当科目:法学演習(民法))。管理建築士講習テキストの建築士法・その他関係法令に関する科目等の執筆をするなど、多くの執筆・著書を手掛ける。一般社団法人日本建築士事務所協会連合会理事・法律顧問弁護士。一般社団法人住宅生産団体連合会消費者制度部会コンサルタント。[email protected]
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