九州内の林業・木材・住宅関連業者、行政などの連携の場「NPO法人・九州森林ネットワーク」(北里耕亮理事長/熊本県小国町長)は10月28日・29日、北九州市で「第16回九州森林フォーラムin開門」を開催した。
テーマは「震災を超えて~どうする木材業界?九州の家づくりはどこへ向かうのか?」。
28日は、山口県・福岡県で地域材活用に取り組む安成工務店(本社:下関市)のモデルハウスとその部材工場「そーれきくがわ」を見学。同工場では、機械プレカットと手刻みを併用する化粧構造材の加工のほか、新聞紙を地域回収して原料とするセルロースファイバー断熱材の製造、工場のおがくずなどを原料とする木質ペレットの製造、バイオマス発電など、木材資源の地域循環に先進的に取り組んでおり、その現状を視察した。
29日は講演とパネルディスカッションを開催。
基調講演では、鹿児島大学農学部の遠藤日雄教授が「九州は一つ、県産材から九州産材へ」をテーマに、国産材活用の現状と九州の林業・木材業が向かうべきビジョンを解説した。
東日本大震災の影響として、被災地の大工・工務店が既存顧客からの修繕対応に追われる中で大手ハウスメーカー・ビルダーが新築受注を取っている現状に触れ、大工・工務店の経営への影響、さらにはそことつながる木材産業への影響を懸念。また、過疎化・高齢化が加速する地域が被災したことで、新築住宅でも高齢化や介護を考えて洋間+ベッド暮らしが中心となり和室が減る、と予測。「柱どり林業」の衰退が加速することも否定できないとした。
また、九州の林産地が連携して九州内で木材や木材資源を消費・循環する「九州産材」のコンセプトを披露、東北の林産地とも連携しながら地域自給を目指すべき、と説いた。
また、基調講演では新建ハウジング編集局長の三浦祐成も、「地域材活用のニーズの変化を探る」と題し、生活者の価値観や住宅ニーズの変化をベースに「木の家のこれから」を解説した。
続いて安成工務店の安成信次社長が、前日の視察の補完として「LCCM(ライフサイクルカーボンマイナス)住宅で「木の家」工務店が復活」をテーマに、自社の取り組みとその意味、今後の展開を紹介した。
パネルディスカッションは講演・報告者に加え、木川研史氏(トライ・ウッド)、村田義弘氏(建築工房自然木)、吉弘辰一氏(吉弘製材所)、が登壇、矢房孝広氏(諸塚村産直住宅推進室事務局長)をコーディネーターに、木材価格や林業活性化、木の家のニーズなどについてディスカッションした。
川上と川下が連携して「顔の見える関係」をつくり住まい手にアピールするだけでなく、川下の工務店など重要家が集まり需要量や必要な材の詳細ををあらかじめ「腹を割って」川上に伝えれば、川上もそれに合わせて供給を準備することができるはず、といった建設的な意見も出た。
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。