生産性の高いチームの再構築を
工務店の「住宅営業力」向上を支援するコンサルタントでインプライ(茨城県水戸市)代表の官谷浩志さんは、生活者の情報収集の手段が、新聞・テレビ・雑誌からネットに移行したことで、住宅新築においても「専門家と生活者の情報ギャップが以前より小さくなり、若い世代では営業やセールストークを嫌う人が増えている」と指摘する。こうした情勢を踏まえ、工務店はどのような営業体制を再構築していくべきか、官谷さんに聞いた。
─工務店の営業の実情は。
生活者の情報収集手段や住宅購買志向が変化するなかで、一昔前の営業手段が全く通用しない。ここ15年ほどの間に、営業の人材育成をあきらめてしまう工務店が増えたと感じる。多くの工務店はFCに加盟するなどして集客力、商品力、ブランド力を高め、「営業力を当てにしない戦略」にかじを切ってきた。
採用でも、「営業」では人材が集まらないため、「アドバイザー」や「ソムリエ」などに肩書を変えて採用、仕事の内容的にも「売り込み」の要素を排除し、若手スタッフには自社商品の説明をさせるのみで、あとはお客さんが選んでくれるのを待つという緩いスタンス。
今、こうした営業力を持たない30代後半の人材が中堅社員になり、新人教育を任される状況だ。その間、同様に商品力を強化した工務店が増え、これ以上差別化が難しくなりつつあるなか、営業力が弱まった工務店が窮地にある。
─営業のスタッフに今、必要なスキルは。
すぐに実践できることは、顧客に優先順位をつけて追客すること。例えば、年収350万円・自己資金150万円のAさん・35歳と、同450万円・同500万円のBさん27歳は、一見するとBさんを優先した方がいいように思うが、さらに深掘りしてヒアリングしたら、Aさんからは「社宅の退去期限が来年3月」「競合の強みが自社と類似」、Bさんからは「家賃がもったいないから持家を検討」「競合は自社とは類似点の少ないローコストメーカー」という情報が得られたとする。
この場合、「建築動機」と「競合」という2つの条件をかけ合わせると、優先度は、当初低いと思われたAさんが逆転する。契約できる確率の低いBさんの追客を見送る判断ができれば、Aさんの追客に集中しながら、新規顧客の開拓に移れる。そうすればAさんと同等の条件をもつCさんと出会える確率が高まる。全体として契約率が改善し、受注棟数を増やせる。
これは、現状の営業メンバーを1人も変えず、商品もコンセプトも変えずにすぐに実践できること。多くの工務店に伸びしろがある。
─営業チームは、どのようにつくっていくべきか。
リーダーは、顧客を追うスタッフのために、追客の優先順位を決めるために必要な情報を整理し、判断をサポートすべき。これを見過ごしてスタッフに5〜6回も追客させて失注させているようでは、リーダーとして失格と言わざるを得ない。
顧客あたりにかけられる工数の限界を知ることも重要。1年は52週間、土日曜日は104日前後しかない。必要な受注件数とスタッフ数にもよるが、顧客1世帯につき契約前の商談に使えるのは数日(回)程度。ここを意識しなければ、スタッフが過労で潰れてしまう。生産性の高いチームを再構築すべき時期に来ている。
4/16、5/28開催の「工務店売上向上塾」にインプライ代表・官谷浩志氏が登壇します。
詳細、セミナーお申込みはこちらから
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。