経済産業省資源エネルギー庁は11月29日、今年で8年目を迎えるZEH(ネット・ゼロ・エネルギーハウス)支援事業を分析して紹介するZEH支援事業調査発表会を開催した。2019年度は従来型の補助金のほか「レジリエンス強化型」など多様なメニューを揃えたが、交付申請は大きく減少。ZEHの魅力を伝えきれていないビルダーへの課題が指摘された。
来年同規模予算獲得へ
国によるZEH支援が補助事業としてスタートしたのは2012年度。2018年度からは国土交通省、経済産業省、環境省が連携する事業に拡充され、2019年度は、前年度から引き続いて「ZEH+実証事業」が公募され省エネの深掘りとFITからの自立を目指したほか、停電時のレジリエンスを強化した住宅への支援として新たに「ZEH+R強化事業」がスタートした。
2019年度事業の交付申請と交付決定の状況は、7398件の申請に対し7345件の決定。これは2018年度の申請9815件、決定9172件を大きく下回る。交付決定の内訳はZEH支援事業4421件、ZEH+実証事業1667件、ZEH+R強化事業1257件。
交付申請が減少した要因について「前年度は予算をオーバーし未交付住宅が多数出たことや消費税増税によるコストアップ要因による失注を嫌い、ZEH仕様を下回る仕様で受注しようという(住宅会社側の)力が働いたのではないか」という指摘があるが、推測の範囲内で実態はよくわからない。来年度予算額については、経産省、環境省とも「本年並みの予算は確保できる」とみており、今年の状況からすると抽選での交付決定はなさそうだ。
2018年度の実績は5万6307件
補助事業の受け皿となるZEHビルダー/プランナーの累計登録数は、2019年10月末で前年度末より259社増え、累計で7454社となった。2018年度末の登録ZEHビルダー/プランナーからの実績報告によると、2018年度に登録ビルダー/プランナーが供給した注文住宅、建売住宅、既存改修の合計24万9588件のうち、ZEHシリーズ(ZEH、NearlyZEHの合計)は5万6307件で、割合は22.5%だった。ZEH実績「50%以上」と答えたビルダーが全体の9.1%、「1~49%」が同じく18.9%で、ZEH実績ゼロが実に48.8%。自社で設定した普及目標を達成できた会社は17.2%に留まった。
ZEHビルダー制度は登録ビルダーが2020年度までの5カ年計画で50%の達成を目標にしているが、3年目で22.5%の普及実績では目標の達成は難しいというのが大方の見方だ。課題は、ZEHビルダー登録をしても、「1棟もZEHを実現できなかった」ビルダーが圧倒的に多いことだ。
顧客心理読む営業
実績報告では、ZEH普及目標の未達理由と達成理由についても紹介された。圧倒的に多かった未達理由が「顧客の予算」、続いて「顧客の理解を引き出すことが出来なかった」というもの。逆に目標達成につながった理由は、「ZEH仕様の商品設定」。カタログ化などで消費者に分かりやすい説明ができたことや、経済性や快適性などの「ZEHメリットの訴求」が出来たことを成功理由に挙げている人が多い。経産省担当者は、1棟もZEHを実現できなかったZEHビルダーの多くは、営業面で顧客の心を納得させる「何か」が足りなかったのではないか、と指摘している。
住まい手アンケート結果
ZEH補助金を活用して一定期間居住したZEH住まい手によるアンケートでは、自宅をZEHにした理由について、「光熱費の削減」が第一、続いて「(温度差の少ない室内など)快適な住まいの実現」を挙げており、「地球環境への配慮」という回答は少なかった。さらに、3分の2の住まい手は「価格がアップしてもZEHの仕様で妥協はしなかった」と回答している。「快適な住まいと経済性」の両方を正しく伝えることがその「何か」であり、ZEH営業成功のカギと言えそうだ。
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